システムの構成③ 様々なシステム構成②

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クライアントサーバシステム

クライアントサーバシステムは、複数のコンピュータがネットワークで接続され、リソースを共有するシステムのことを指します。このシステムは、クライアントとサーバの2つの役割に分かれています。

サーバは、サービスやリソースを提供するコンピュータのことであり、ネットワーク上でクライアントからの要求を受け取り、処理して結果を返す役割を持っています。

クライアントは、サービスやリソースを利用する側のコンピュータで、ユーザーが直接操作するデバイス(PC、スマートフォンなど)に該当します。

クライアント(client)とは「依頼人」「顧客」「取引先」を、
サーバ(server)とは「サービス(Service)を提供する人・物」を意味する言葉です。

クライアントサーバシステムの例としては、Webサイトがあります。Webサイトは、Webサーバから提供されるWebページを、Webブラウザというクライアントが受け取って画面に表示します。また、オンラインゲームも、ゲームサーバというサーバが複数のクライアントからの入力を処理し、ゲームの進行を制御しています。

クライアントサーバシステムは、セキュリティ管理や処理能力の分散など、様々な利点がありますが、設計や管理には注意が必要です。例えば、サーバがダウンした場合、全てのクライアントに影響を与える可能性があるため、適切なバックアップと復旧手順が必要です。

以下に様々な種類のサーバについて説明します。

ファイル
サーバ
ファイルサーバは、ネットワーク上でファイルやドキュメントを保存・共有するためのサーバです。
クライアント(ユーザーのPCなど)はファイルサーバにアクセスしてファイルを保存、読み込み、更新、削除することができます。企業や組織では、共有ドキュメントやバックアップデータの保管場所としてよく使用されます。
プリント
サーバ
プリントサーバは、ネットワークに接続されたプリンタのリソースを管理するサーバです。
これにより、ユーザーは自分のPCからネットワーク経由でプリンタにアクセスし、印刷ジョブを送信することができます。プリントサーバは印刷要求をキューに入れ、利用可能なプリンタへと順に割り当てます。
WebサーバWebサーバは、インターネット上でウェブページを公開するためのサーバです。
WebサーバはHTTP(HyperText Transfer Protocol)を用いてクライアント(ウェブブラウザ)からの要求に応答し、ウェブページの内容(HTML, CSS, JavaScript、画像など)を送信します。
メール
サーバ
メールサーバは、インターネット上で電子メールの送受信を処理するサーバです。メールサーバは主に2つの部分で構成されています。
SMTP(Simple Mail Transfer Protocol)サーバはメールの送信を、POP(Post Office Protocol)またはIMAP(Internet Message Access Protocol)サーバはメールの受信をそれぞれ担当します。
データベース
サーバ
データベースサーバは、データベース管理システム(DBMS)を実行し、ユーザーやアプリケーションからのデータベースに対するクエリ(問い合わせ)を処理するサーバです。
データベースサーバはデータの安全性と一貫性を保つための機能(トランザクション処理、バックアップ、復元など)を提供します。

サーバの仮想化

サーバの仮想化は、物理的なサーバハードウェア上に、仮想的な複数のサーバを構築する技術です。

これにより、複数の仮想サーバを1つのハードウェアで稼働させることができ、ハードウェアの効率を最大限に活用できます。

サーバの仮想化によって、仮想サーバを簡単に追加、削除、移動することができ、システム管理者が業務を効率化することができます。

また、仮想化されたサーバを一時停止させることなく、あるハードウェアから別のハードウェアへ移動させる技術をライブマイグレーション(live migration)といいます。このプロセスにより、サーバは移動前の状態を維持しながら、処理を引き続き行うことができます。

ライブマイグレーションは、サーバのダウンタイムを最小限に抑えることで、サービスの連続性を保証します。この技術は、システムのメンテナンス、負荷の分散、災害対策など、様々な目的で利用されます。

サーバの仮想化には以下のような種類があります。

ホスト型仮想サーバのOSと仮想化ソフトウェアをホストOS上で動作させる形態です。ホストOSのリソースを仮想サーバで共有するため、軽量なアプリケーションなどの仮想化に適しています。
ハイパバイザ型仮想サーバを直接ハードウェア上で動作させる形態で、ホストOSは必要ありません。仮想サーバ同士でリソースを共有するため、複数の重いアプリケーションやOSの仮想化に適しています。
コンテナ型アプリケーションごとに独立した仮想環境を構築し、リソースを共有する形態です。アプリケーションの実行環境をパッケージ化するため、短時間でのアプリケーションのデプロイや移植性に優れています。ただし、OSレベルの仮想化であるため、異なるOSのアプリケーションを同時に実行することはできません。
ホスト型
ハイパバイザ型
コンテナ型

シンクライアントシステム

シンクライアントは、機能を入力、表示、通信機能などに限定した端末(主にノートPC)です。

一般の端末が独自にデータやアプリケーションを処理するのに対し、シンクライアントはリモートでサーバに処理を依頼し、処理されて戻ってきた結果を画面表示するだけのシンプルな構成を持ちます。

データはサーバに保存され、シンクライアント端末には残らないため、社外に持ち出した端末が盗難されたときなどの情報漏洩のリスクに対して有効です。

また、シンクライアントは省スペース・省電力で、運用コストが低いため、大規模な企業や公共施設、学校などで広く利用されています。

シンクライアント(Thin Client)のThinは薄いという意味。機能を限定されていることから、このような名前が付けられています。

VDI

VDI(Virtual Desktop Infrastructure)は、シンクライアントの一種で、仮想化技術を用いて複数の仮想デスクトップ環境を一つのサーバで提供するシステムです。

VDIの導入により、仮想デスクトップ上でOSやアプリケーションを実行することが可能となります。これにより、クライアント側では低スペックのデバイスを使用することが可能となります。

また、VDIでは、クライアント端末に仮想デスクトップの画面だけを転送し(画面転送)、作業内容はサーバ上に保存されます。これにより、セキュリティが向上し、データバックアップが容易になります。

グリッドコンピューティング

グリッドコンピューティングは、複数のコンピューターをネットワークで接続し、リソースを共有して計算能力を拡張する分散処理技術です。

異なる場所や組織のコンピュータが協力してグリッドネットワークを構成することで、スーパーコンピュータ並の高い計算能力や信頼性を実現します。

グリッドコンピューティングは、大規模な科学技術計算やデータ処理、天気予報などの分野で活用され、コスト削減や処理速度の向上に貢献しています。

グリッドコンピューティングとクラスタリングの違い

グリッドコンピューティングとクラスタリングは、複数のコンピューターを利用して処理能力を高める技術ですが、それぞれに特徴があります。

グリッドコンピューティング: グリッドコンピューティングは、地理的に分散している複数のコンピューターシステムをインターネットなどのネットワークで結び、一つの大きな仮想コンピューターのように動作させる技術です。これにより、各コンピューターの処理能力やストレージリソースを共有し、大規模な計算タスクやデータ集約型のタスクを効率的に処理できます。グリッドコンピューティングでは、参加する各コンピューターが独立しており、異なる場所に存在することが多いです。

クラスタリング: クラスタリングは、複数のコンピューターを物理的に近い場所に配置し、それらを連携させて一つのタスクを処理する技術です。クラスタリングにおいては、通常、同種または類似のハードウェアを使用し、高可用性、負荷分散、並列処理などの目的で構成されます。クラスタ内のコンピューターは協力して動作し、一つのシステムとして認識されることが多いです。

要するに、グリッドコンピューティングは地理的に分散した環境でのリソース共有に重点を置き、クラスタリングは物理的に近い環境での高性能な処理能力や高可用性を目指す点で異なります。

NAS

NAS(Network Attached Storage)は、LANなどのネットワークに接続された専用のデータストレージデバイス(HDD、SSD等)で、ファイルサーバとしての機能を備えています。

NASは、複数のユーザーやデバイスがデータを共有・保存・アクセスできるように設計されており、ファイルのバックアップや共有に使用されます。

簡単に言うと、NASはネットワーク経由でアクセス可能な共有ストレージです。

関連用語

ピアツーピア

ピアツーピア(P2P)は、コンピュータネットワークのモデルの一つで、各ノード(コンピュータやデバイス)が対等な関係を持つことを特徴としています。

すなわち、クライアントサーバシステムのように役割の違いや従属関係がなく、ネットワーク内の各コンピュータがサーバーとクライアントの両方の役割を果たします。

このシステムでは、各「ピア」が直接互いに通信し、ファイルの共有、通信、データのやり取りを行います。P2Pネットワークは、中央のサーバーに依存せずに機能するため、スケーラビリティが高く、ネットワークの障害点が少ないという利点があります。

ファイル共有システム、VoIP(Voice over Internet Protocol)、ブロックチェーンなど、さまざまな用途で利用されています。

スタンドアローン

スタンドアローンは、他のシステムやネットワークと接続されずに独立して動作するコンピュータシステムまたはソフトウェアを指します。

スタンドアローンのコンピュータは、全ての処理やデータ管理を自身で行い、外部のシステムやネットワークリソースに頼りません。これは、オフィスの文書作成や個人のPC利用など、特定のタスクにおいて必要十分な機能を提供します。

スタンドアローンシステムの利点は、シンプルで信頼性が高く、ネットワークのセキュリティリスクから隔離されている点にありますが、データの共有やリソースの利用には限界があります。

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