企画プロセス
企画プロセスではシステム化構想とシステム化計画の策定を行います。
システム化構想
システム化構想は、プロジェクトの全体像を描く段階で、システムの目的や目標を明確にし、解決すべき課題を特定します。
この段階では、プロジェクトの方向性や概要が決定され、どのようなシステムを構築するかの基本的なアイデアが生まれます。
システム化構想は「家を建てるための設計図を描く段階」に似ています。
例えば、新しい家には何部屋が必要か、どんなスタイルにするか、何のための家なのか(一般的な家庭用、レンタル用、事務所用など)、またどんなライフスタイルを送りたいのか等を考えます。
これは、新しいシステムが何を達成するべきか、どんな目的を果たすべきか、どのように機能すべきかを決定する初期の概念設計段階です。
システム化計画
システム化計画は、システム化構想で決めた目標に沿って、具体的な手順や予算、スケジュール、リソースなどを詳細に計画する段階です。
ここでは、システム開発の工程や期間、人員配置、品質管理方法などを決定し、プロジェクトがスムーズに進行するよう計画します。
システム化計画は「家の建設プロジェクトの詳細を計画する段階」に相当します。
具体的な建設計画を立て、材料を選び、工事のスケジュールを決め、費用を計算し、どのように建設するかを決定します。
これはシステムの設計、開発、および実装の詳細な計画を策定する段階であり、その計画に基づき、プロジェクトの進行が行われます。
システム化構想とシステム化計画について、具体例を挙げて説明します。
例として、医療機関での患者情報管理システムの導入を考えます。
- システム化構想: システム化構想では、システム導入の背景や目的、対象範囲、効果を明確にし、プロジェクト全体の方向性を決定します。
- 背景:医療機関での患者情報管理が紙ベースで行われており、効率性と情報の正確性に課題がある。
- 目的:患者情報管理システムの導入により、情報管理の効率化、情報共有の向上、診療品質の向上を図る。
- 対象範囲:受付・診療・会計の各フェーズでの患者情報管理と、医師と看護師間の情報共有。
- 効果:患者情報の一元管理による効率化、診療ミスの削減、患者満足度の向上。
- システム化計画: システム化計画では、システム構築の具体的な手順やスケジュール、予算、リソース、リスクなどを詳細に計画します。
- システム導入の手順:要件定義→設計→開発→テスト→導入→運用・保守
- スケジュール:プロジェクト期間は1年。各フェーズの期間やマイルストーンを設定。
- 予算:システム開発費用、導入費用、運用費用などの予算を見積もり。
- リソース:プロジェクトチームの構成、役割分担、外部ベンダーの利用等を決定。
- リスク:遅延リスク、コストオーバーランリスク、技術リスクなどの評価と対策。
これらの構想と計画を適切に策定し、関係者と共有することで、プロジェクトの成功確率が高まります。
システム化計画では、情報システムの費用対効果を評価します。その際に利用される指標としてROI(Return on Investment)があります。
ROIは、投資利益率とも呼ばれ、投資した資金に対して得られる利益(リターン)の割合を示す指標です。投資効果の評価や比較、事業計画の立案において重要な意思決定基準となります。
ROIの計算方法は次のとおりです。
\( \displaystyle {}\text{ROI}=\frac{\textbf{投資による利益}}{\textbf{投資額}}\times100\)
例えば、ある企業が新しい事業に1000万円を投資し、その事業から得られる年間の純利益が200万円だったとします。
この場合、ROIは以下のように計算できます。 ROI = 200万円 ÷ 1000万円 × 100 = 20%
この結果から、投資した1000万円に対して20%の収益を得たことが分かります。ROIが高いほど、投資の効果が高いと判断されます。