マーケティング③ マーケティング手法

目次

マーケティング手法①

マスマーケティング

マスマーケティングは、広く一般の消費者に向けた商品やサービスのプロモーションを行うマーケティング手法です。

ターゲットとなる消費者の嗜好やニーズにあまり焦点を当てず、一般的な市場全体にアピールすることを目的としています。

プロモーションは主にマスコミ4媒体(テレビ、ラジオ、新聞、雑誌)を通じて行なわれます。

ただし、このアプローチでは商品やサービスがコモディティ化(同質化)しやすく、競合他社との差別化が難しくなることが課題となります。

コカ・コーラやマクドナルドは、幅広い顧客層に向けて一貫した製品やサービスを提供する典型的なマスマーケティング企業です。

彼らのプロモーション戦略は、多くの人々に共通の訴求ポイントを持つことで、幅広い顧客にアピールすることを目指しています。

ワントゥワンマーケティング

ワントゥワンマーケティングは、個々の顧客に対してパーソナライズされたマーケティング活動を行う手法です。

顧客の購買履歴や興味・関心を基に、個別のニーズや要望に合わせた商品やサービスを提案することを目指しています。

レコメンデーション機能を使って、顧客に適切な商品やサービスを提案することが一例です。

AmazonやNetflixは、個々の顧客の嗜好や購買履歴に基づいてパーソナライズされた商品やコンテンツの推奨を行うことで、ワントゥワンマーケティングを実践しています。

これにより、個々の顧客に適切な製品やサービスを提案し、顧客満足度を向上させることができます。

レコメンデーション(recommendation)は「推薦」「おすすめ」「提案」という意味の英単語です。

マスカスタマイゼーション

マスカスタマイゼーションは、マスマーケティングとワントゥワンマーケティングの中間に位置するマーケティング手法です。

ここでは、多くの消費者に対して、ある程度カスタマイズされた商品やサービスを提供することを目指しています。

顧客が自分のニーズに合わせて商品やサービスを選択・カスタマイズできるようにすることで、広い市場へのアピールと個々の顧客満足度の向上を両立させようとする戦略です。

HPでは、顧客がオンライン上でパソコンのスペックをカスタマイズできるサービスが提供されています。顧客は、CPU、メモリ、ストレージなどのパーツを自分のニーズに合わせて選択し、オーダーメイドのパソコンを購入できます。

これにより、多くの顧客に対して個別の要求に応える商品を提供しています。

マーケティング手法②

ダイレクトマーケティング

ダイレクトマーケティングは、企業が消費者に直接アプローチするマーケティング手法です。

例えば、電話やメール、ダイレクトメールなどを使って、特定の顧客層にターゲットを絞り、個別に商品やサービスを提案します。

インバウンドマーケティング

インバウンドマーケティングは、顧客が自ら企業の情報やサービスに興味を持ち、アプローチしてくるように仕向けるマーケティング手法です。

従来のアウトバウンドマーケティングが広告や営業活動を通じて積極的に顧客にアプローチするのに対し、インバウンドマーケティングはブログやSNS、SEO対策などを用いて顧客が自分から情報を求めてくるよう関心を引き付けます。

インバウンド(inbound)は「外から中へ入ってくる」という意味の英単語です。「in」(中に)と「bound」(向かう)を合わせた言葉です。

インバウンド需要

インバウンド需要とは、外国からの観光客など、国外から国内に向けられる需要のことを指します。

観光業界でよく使われる用語で、外国人観光客がその国のホテル、レストラン、観光スポットなどで消費することによって生じる経済効果を表します。

インバウンド需要が高まると、その国の観光収入が増加し、経済全体が活性化する効果があります。

また、逆に日本人が海外で消費する需要を「アウトバウンド需要」と言います。

プッシュ戦略・プル戦略

プッシュ戦略

プッシュ戦略は、製品やサービスを積極的に顧客や流通業者に売り込むアプローチです。

具体的な方法としては、販売促進活動(ディスプレイやインセンティブなど)、卸業者や小売業者への販売促進、製品のデモンストレーションや新製品の発表、セールスプロモーション(割引や特典など)などがあります。

プッシュ戦略は、顧客の購買意欲を引き出すことを目的としています。

例)営業チームによるアポイントメント営業:営業チームが顧客に直接アプローチし、製品デモンストレーションやプレゼンテーションを行って、契約獲得を目指します。

プル戦略

プル戦略は、顧客のニーズや欲求を引き出すことで、顧客自らが製品やサービスを求めるように仕向けるアプローチです。

プル戦略では、広告や宣伝活動、口コミやSNSを活用した情報拡散、ブランドイメージの向上などが行われます。

プル戦略は、顧客の関心を喚起し、製品やサービスに対する期待感を高めることを目的としています。

例)TVコマーシャルやオンライン広告:製品やサービスの特徴や利点を広告を通じてアピールし、顧客の関心を引き付けます。

「プッシュ戦略・プル戦略」例え話

プッシュ戦略とプル戦略を狩猟に例えて説明します。

  1. プッシュ戦略: これは猟師が獲物を追い込むタイプの狩りに例えることができます。例えば、猟師が鳥を獲るために狩猟犬と猟銃を使い、鳥を一方向に追い込んで狩猟するとします。これは製品を消費者に”押し付ける”プッシュ戦略に似ています。
  2. プル戦略: これは罠を使って獲物が自ら罠にかかるタイプの狩りに例えることができます。例えば、猟師が罠にエサを仕掛け、獲物がそのエサに自ら引き寄せられるというものです。これは消費者が自発的に製品を”引き寄せる”プル戦略に似ています。

それぞれの戦略には特徴と適用するべき状況があり、どちらが優れているとは一概には言えません。

マーチャンダイジング

マーチャンダイジングは、消費者のニーズや欲求に応じて、適切な商品を、適切な数量、適切な価格、適切なタイミングで提供する企業活動です。

これには、店頭における商品の魅力的な陳列、効果的なプロモーション、適切な価格設定、そしてタイムリーな在庫管理が含まれます。

この手法の目的は、顧客が商品に興味を持ちやすくすることで、購買意欲を高め、最終的な購入につなげることです。店頭での目立つ商品の配置や魅力的なディスプレイ、特定の季節やイベントに合わせた特別なプロモーションなど、顧客のショッピング体験を向上させる要素が重要です。

マーチャンダイジングの具体例

マーチャンダイジングの具体例として、以下のものがあります。

  • 新学期に合わせて文房具や学用品をプロモーションし、特設コーナーで展示する。
  • 夏にスイカを目立つ場所に陳列し、セール価格で販売する。
  • 冬のシーズンに向けて防寒衣類やヒーターなどの暖房器具を店頭に配置し、キャンペーンを行う。
  • クリスマスシーズンにクリスマスケーキを特設コーナーで販売し、試食会を開催する。
  • バレンタインデーに向けてチョコレートを特設コーナーで販売し、ギフト包装サービスを提供する。

カニバリゼーション

カニバリゼーションは、企業が新しい商品やサービスを投入した結果、自社の既存商品やサービスの売上が減少する現象です。

例えば、スマートフォンメーカーが新モデルを発売すると、既存モデルの売上が下がることが考えられます。

これは、新製品の投入によって市場内での競争が激しくなり、自社製品間での売り上げの奪い合いが起こるためです。

カニバリゼーション(cannibalization)は「共食い」という意味の英単語です。

クロスメディアマーケティング

クロスメディアマーケティングは、複数のメディアやチャネル(例:テレビ、ラジオ、インターネット、SNSなど)を組み合わせて、広告やプロモーション活動を行うマーケティング手法です。

例えば、テレビCMの最後に「続きはWEBで」とナレーションし、Webサイトに誘導する手法などが挙げられます。

これにより、ターゲット層に対して効果的にメッセージを伝えることができ、広告効果を最大化することが目的です。

価格設定手法

代表的な価格設定手法には以下のようなものがあります。

スキミングプライシング

スキミングプライシングは、新製品の価格を最初に高く設定し、時間が経つにつれて徐々に値下げしていく戦略です。

これにより、初期の高い価格で利益を最大化し、その後の値下げで市場シェアを獲得することが狙いです。上澄み吸収価格ともいいます。

例えば、新しく高級スマートフォンが発売されると、最初は高価格で販売されますが、次のモデルが登場するころには値下げが行われることがあります。また、最新技術を搭載した家電製品(例:4Kテレビ、ロボット掃除機など)が発売されたときには、最初は高価格で販売され、その後価格が下がることがよくあります。

スキミング(skimming)とは「上澄みをすくい取ること」を意味します。

ペネトレーションプライシング

ペネトレーションプライシングは、新製品の価格を最初に低く設定し、多くの顧客を獲得して市場シェアを急速に拡大する戦略です。

その後、顧客基盤が確立されたら価格を上げることがあります。市場浸透価格ともいいます。

例えば、新しいビデオストリーミングサービスが、最初は安価な料金プランで顧客を獲得し、後に料金を上げることが考えられます。

ペネトレーション(penetration)には「浸透」「貫通」「侵入」などの意味があります。

ダイナミックプライシング

ダイナミックプライシングは、需要や供給、競合状況などの変動に応じて商品やサービスの価格を柔軟に変更する戦略です。動的価格設定ともいいます。

例えば、航空券やホテル予約の価格が、時期や予約状況に応じて変動することが挙げられます。

ダイナミック(dynamic)には「動的な」という意味があります。

関連用語

デジタルサイネージ

デジタルサイネージは、デジタルディスプレイやプロジェクターなどを用いて情報を伝える電子看板のことです。

広告やインフォメーション、エンターテインメントなど、さまざまな用途で活用されています。デジタルサイネージは、タイムリーな情報提供や動画コンテンツの活用、遠隔操作などの利点があります。

また、近年では3D表現を使ったデジタルサイネージも登場し、話題を集めています。

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