データ利活用② ビッグデータ

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ビッグデータ

ビッグデータとは、従来のデータ管理や処理手法では対処しきれないほどの大量で複雑なデータのことを指します。

インターネット、SNS、IoTデバイスなどから生成されるリアルタイム性を有する情報が、ビッグデータに含まれます。

ビッグデータの特徴は、データ量(Volume)、データの多様性(Variety)、データの生成速度(Velocity)の3つのVが挙げられます。

  • データ量(Volume)は、データの規模の大きさを指します。これは、従来のデータベースでは扱いきれないほどのデータ量が存在することを意味します。
  • データの多様性(Variety)は、データの種類が多岐にわたることを指します。例えば、画像や動画、テキスト、音声などがあります。
  • データの生成速度(Velocity)は、データがどれだけ迅速に生成・蓄積されるかを示します。現代のデバイスやシステムでは、瞬時に大量のデータが生成されるため、この速度も非常に高いです。

こうした特徴を持つビッグデータを活用することで、様々な分野において価値を創出できます。

例えば、データ分析や機械学習を用いることで、消費者の嗜好や市場動向を把握し、新商品開発や効果的な広告戦略などに活かすことが可能です。また、効率的な業務運営やリスク管理、意思決定の支援など、企業の競争力を向上させることができます。

ただし、ビッグデータを扱う際には、プライバシー保護やデータの質・整合性、セキュリティ対策、専門知識を持った人材の確保など、いくつかの課題や留意点も存在します。これらを克服しながら、ビッグデータを適切に活用することで、多くのメリットを享受できます。

ビッグデータは、オープンデータとパーソナルデータに大別されます。

オープンデータ

ビッグデータの一部には、オープンデータがあります。

オープンデータとは、誰でも自由に利用・再配布できるデータのことで、政府や企業が提供することが一般的です。

例えば、政府が公開する交通データや気象データ、企業が提供する消費者行動データなどがあります。

これらのオープンデータを活用することで、市民の生活やビジネス環境の改善につながります。

交通データを利用して渋滞予測や最適なルート提案を行うアプリや、気象データを基に農業生産を最適化するシステムなどがその具体例です。

パーソナルデータ

パーソナルデータとは、個人情報保護法で保護の対象となる情報(個人の属性情報)に加え、移動・行動・購買履歴、ウェアラブル機器から収集された個人情報、ならびに匿名加工情報などを指す言葉です。

すなわち、「パーソナルデータ」とは、個人情報に加え、個人情報との境界が曖昧なものを含む、個人と関係性が見出される広範囲の情報を指します。

参考:『平成29年度版 情報通信白書』総務省

匿名加工情報

匿名加工情報とは、特定の個人を識別できないように個人情報を加工した情報のことです。

これにより、データを利用する際の個人のプライバシーが保護されるため、一定のルールの下で、本人同意を得ることなく、目的外利用や第三者提供が可能です。

例えば、年齢や性別、地域などの情報を集約し、個人が特定できない形でデータ分析を行うことができます。

匿名加工情報の活用は、ビジネスやマーケティング、公共サービスの改善などの目的で行われることが多く、個人のプライバシー保護とデータ活用のバランスを保つために重要な役割を果たしています。

ビッグデータの活用例

ビッグデータは、膨大な量のデータを収集・分析することで、企業や政府機関などが課題を発見し、新たな価値を創造することが可能となります。以下に、ビッグデータの具体的な活用例をいくつか紹介します。

  • マーケティング分析:ビッグデータを分析することで、顧客の行動パターンや嗜好を把握することができます。そのため、顧客ニーズに合わせた製品やサービスの開発や、ターゲットとなる顧客への効果的なマーケティングが可能となります。
  • 交通渋滞対策:ビッグデータを活用することで、交通状況をリアルタイムで把握することができます。それに基づいて、渋滞緩和策の提案や、運行スケジュールの最適化ができます。
  • 医療分野:ビッグデータを活用することで、医療分野においても新たな価値を生み出すことができます。例えば、遺伝子情報を分析し、がんの早期発見に役立つ情報を得る研究や、膨大な医療データを分析し、効果的な治療法の発見を支援する研究などがあります。
  • 防犯対策:ビッグデータを活用することで、警察や自治体が犯罪の発生傾向を把握し、予防策を講じることができます。例えば、監視カメラ映像を分析し、異常な動きを検知する技術や、過去の犯罪データを分析し、犯罪の予測を行う技術などがあります。
  • 金融分野:ビッグデータを活用することで、金融機関はリスク管理や顧客サービスの向上に役立てることができます。例えば、膨大な金融取引データを分析して、不正取引を検知する技術や、顧客の購買履歴を分析して、個別に合わせた商品・サービスを提供する技術などがあります。

構造化データ・非構造化データ

構造化データと非構造化データは、データの形式や整理度によって区別されます。

構造化データ

構造化データは、特定の形式やスキーマに従って整理されたデータで、データベースやスプレッドシートなどに格納されることが一般的です。

例えば、顧客情報や商品情報、販売履歴などがこれにあたります。

構造化データは、事前に定義されたフィールドやカテゴリに分類されているため、検索や分析が容易に行えます。

またメタデータは、構造化データの一部としてデータの特性や関係性を記述する情報で、データの管理や検索を効率化する役割があります。

メタデータの例

メタデータとは、データについてのデータであり、そのデータの内容、特性、構造等を説明する情報を提供します。

以下に、メタデータの具体的な例をいくつか挙げます。

  1. ファイル情報: ファイルの名前、タイプ、サイズ、作成日、最終更新日などの情報。
  2. 画像情報: カメラの設定(シャッタースピード、ISO、露出など)、撮影日時、GPS情報など、デジタル画像に埋め込まれたEXIFデータ。
  3. Webページ情報: HTMLのメタタグには、ページのタイトル、説明、キーワード、著者などの情報が含まれます。
  4. ビデオと音声ファイル: ビデオや音声ファイルの長さ、解像度、ビットレート、フォーマットなどの情報。
  5. データベースのスキーマ情報: データベースのテーブル名、フィールド名、フィールドタイプ、フィールド長などの情報。
  6. メール情報: メールの送信者、受信者、日付、件名などのヘッダー情報。

これらの情報は、データの管理、検索、分析、適用などを行う際に重要な役割を果たします。

非構造化データ

一方、非構造化データは、特定の形式に従わないデータで、テキスト、画像、動画、音声など多様な形式が含まれます。

非構造化データは、情報が散在しているため、検索や分析が難しいとされます。また、メタデータが存在しない場合もあります。

しかし、アノテーションという手法を用いることで、構造化データと同様に扱いやすくすることができます。アノテーションとは、非構造化データにAIを用いてメタデータを含むタグやラベルを付与する技術です。

アノテーションは、機械学習やデータ分析の際に、非構造化データから有益な情報を引き出すための重要なプロセスです。


構造化データと非構造化データは、それぞれ異なる形式や特性を持っており、ビッグデータ分析の際には、両者を適切に組み合わせることで、より深い洞察を得ることができます。

アノテーション(annotation)とは、「注釈」「注記」「付記」という意味の英単語です。

データサイエンス

データサイエンスは、ビックデータなどの大量のデータから価値ある情報や知識を抽出・分析するための学問分野です。

これには、統計学、機械学習、プログラミング、データビジュアライゼーションなどの技術が含まれます。

データサイエンスは、さまざまな業界でデータを活用して意思決定をサポートし、新たなビジネスチャンスを発見するために利用されています。

データサイエンティスト

データサイエンティストは、データサイエンスの専門家です。

彼らは統計学、機械学習、プログラミング技術を活用して、大量のデータから有用な情報を見つけ出し、それを基に戦略的な意思決定を支援します。

データサイエンティストの業務は、データの収集、処理、分析から洞察の報告に至るまで多岐にわたり、ビジネスの最適化、新製品の開発、顧客体験の改善など、多様な分野でそのスキルが求められています。

データマイニング

データマイニングは、データサイエンスの一部であり、大量のデータから隠れたパターンや関連性を見つけ出すための手法です。

データマイニングは、機械学習アルゴリズムや統計手法を用いて、データの中に潜む有益な情報を探索・抽出します。

例えば、データマイニングの一つの手法であるバスケット分析は、顧客が購入した商品の組み合わせを分析することで、商品間の関連性を調べるアプローチです。バスケット分析を使って、どの商品が一緒に購入される傾向があるかを特定し、販売戦略やマーケティング施策の最適化に役立てることができます。

データマイニングのイメージ

テキストマイニング

テキストマイニングとは、データマイニングの一種で、非構造化テキストデータから価値ある情報や知識を抽出するプロセスです。

大量のテキスト情報からパターン、トレンド、関連性などを検出し、ビジネスや研究の意思決定をサポートします。

テキストマイニングは、自然言語処理(NLP)、情報検索、データマイニングなどの技術を組み合わせて実現されます。

関連用語

PDS

PDSとは、Personal Data Store(個人データストア)の略で、個々のユーザーが自身の個人情報を一元管理するシステムのことを指します。

ユーザーは自分の情報に対して誰にどのように利用されるかを制御することができます。

個人情報の取り扱いをユーザー自身がコントロールできるため、プライバシー保護や情報のセキュリティ確保に寄与します。

情報銀行

情報銀行は、個人のデータ(個人情報)を保管し、個人の許可に基づいて第三者に提供する新しいビジネスモデルです。

個人は自身の情報を情報銀行に預け、どの企業にどのような目的で利用されるかを制御しながら、新しいサービスや報酬を受け取ることができます。

情報銀行は、個人データの利用を調整することで、個人のプライバシーを守りつつ、データを需要がある企業や組織と共有することができます。

PDSと情報銀行は、個人のデータプライバシーやセキュリティを保護しながら、データの活用を促進することを目指しています。

これらのシステムにより、個人は自分のデータを自由に管理・共有でき、企業は適切なデータ活用を通じてビジネスの競争力を向上させることができます。

PPDAC

PPDAC(Problem, Plan, Data, Analysis, Conclusion)は、データサイエンスにおけるデータ分析プロジェクトを進めるためのフレームワークです。PPDACは以下の5つのステップから構成されています。

  1. Problem(問題):分析対象となる問題や課題を明確に定義します。
  2. Plan(計画):問題解決に向けた分析方法やアプローチを計画し、必要なリソースやツールを特定します。
  3. Data(データ):計画に基づいて、適切なデータを収集、整理、前処理します。
  4. Analysis(分析):収集したデータに対して、選択した手法やアルゴリズムを適用して分析を行います。この過程で、新たな洞察や知見を得ることができます。
  5. Conclusion(結論):分析結果を元に、問題解決や意思決定をサポートする具体的なアクションや戦略を提案します。また、分析の信頼性や限界を評価し、今後の改善点や追加調査が必要な点を明らかにします。

PPDACフレームワークは、データ分析プロジェクトの進行を効率的かつ効果的に行うための指針として用いられます。

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