マーケティング② マーケティングの基礎②

目次

マーケティング戦略

プロダクトライフサイクル

プロダクトライフサイクルは、製品が市場に導入されてから最終的に消滅するまでの過程を「導入期」「成長期」「成熟期」「衰退期」4つのフェーズに分類し、各フェーズに応じた市場環境と戦略を提示する理論です。

導入期製品が市場に新しく登場し、顧客への認知が始まる段階です。この期間では、販売量はまだ少なく、利益も限定的です。製品の知名度を上げるためにマーケティング活動が重要となります。
成長期製品が市場で受け入れられ始め、急速に販売量が増加する段階です。利益も伸びる一方で、競合他社が同様の製品を投入することもあります。この期間では、顧客ニーズに対応した製品改良や拡販活動が重要となります。
成熟期市場の飽和に伴い、製品の販売量の伸びが鈍化する段階です。競合が激しくなるため、差別化やコスト削減が求められます。この期間では、顧客ロイヤリティを高めるためのマーケティング活動や効率的な生産・販売戦略が重要となります。
衰退期製品の販売量が減少し、市場からの撤退が始まる段階です。新しい技術や製品が登場し、顧客の関心が移っていくことが一因です。この期間では、製品の生産・販売を縮小するか、新たな製品開発へのシフトを検討することが重要となります。

プロダクトライフサイクルの各フェーズについて、携帯電話市場を例にして説明します。

導入期携帯電話が市場に初めて登場した段階で、最初の製品は大きくて高価で機能も限定的でした。この時期の携帯電話は、一部のビジネスマンやイノベータ(後述)が購入していました。
成長期携帯電話のデザインが洗練され、機能も増え、価格も下がり始めると、急速に普及が進みました。この時期には、多くの携帯電話メーカーが市場に参入し、製品の競争が激化しました。
成熟期フィーチャーフォン(高機能な携帯電話)が市場で最も普及していた時期で、新規顧客の獲得が難しくなり、各社が差別化やコスト削減を追求しました。この時期は、顧客ロイヤリティやブランド力が重要になりました。
衰退期スマートフォンが登場し、従来のフィーチャーフォンの需要が減少し始めました。多くのフィーチャーフォンメーカーは、生産・販売を縮小し、新たなスマートフォン市場への参入を検討しました。

このように、プロダクトライフサイクルは、製品が市場に登場してから最終的に市場から消えるまでの過程を示す概念であり、携帯電話市場の変遷がその典型的な例です。

RFM分析

RFM分析は、顧客の購買行動を評価するためのマーケティング手法です。

RFMは最新購買日(Recency)、購買頻度(Frequency)、購買金額(Monetary)の頭文字を取っています。

データベース化された顧客情報から最近購入した顧客、頻繁に購入する顧客、高額の購入をする顧客を特定し、それぞれに対して適切なマーケティング戦略を立案します。

例:あるECサイトでは、RFM分析を使って最近購入した顧客には新商品情報を送信し、頻繁に購入する顧客には割引クーポンを提供し、高額購入の顧客にはプレミアムサービスを提供することで、顧客満足度を向上させています。

ニーズ志向とシーズ志向

ニーズ志向

ニーズ志向とは、顧客のニーズ(要求・欲求)に焦点を当てたマーケティング手法です。

商品やサービスの開発や販売戦略を立てる際に、顧客が何を求めているのかを考慮し、そのニーズに対応した製品を提供することを目指します。

例:スポーツ用品メーカーは、アスリートのパフォーマンス向上を望むニーズに応えるため、軽量で耐久性のあるシューズを開発・販売しています。

シーズ志向

シーズ志向とは、企業が持っている技術やノウハウ(seeds:シーズ、種のこと)を活用して、新しい商品やサービスを開発するマーケティングアプローチです。

企業は、独自の技術やアイデアを基に、革新的な製品やサービスを生み出し、市場に投入することで競争優位を築くことを目指します。

例:Appleは、同社の技術やノウハウを活用して、スマートフォン市場に画期的な製品であるiPhoneを開発しました。この革新的なデバイスは、従来の携帯電話に比べて多機能で使いやすく、スマートフォン市場の標準を塗り替えました。

コトラ―の競争戦略

コトラーの競争戦略は、企業を「リーダー」「チャレンジャー」「フォロアー」「ニッチャ」の4つのタイプに類型化し、競争地位に応じた戦略目標を提示しています。

量的経営資源





リーダーニッチャ
チャレンジャーフォロアー
タイプ内容
リーダー市場で最も優れた地位を持ち、市場シェアが最も大きい企業です。リーダーは、競合他社を引き離すために、イノベーションやマーケティング活動を積極的に行います。

例)Coca-Cola(炭酸飲料市場)、Apple(スマートフォン市場)
チャレンジャー市場で2番目またはそれ以下の地位にあるが、リーダー企業に挑戦する意欲がある企業です。チャレンジャーは、アグレッシブなマーケティングや製品開発を通じて、市場シェアを獲得しようとします。

例)Pepsi(炭酸飲料市場)、Samsung(スマートフォン市場)
フォロアー市場でリーダー企業やチャレンジャー企業に続く地位にある企業です。フォロアーは、リーダーやチャレンジャーの戦略や製品を模倣することで、リスクを最小限に抑えつつ市場で生き残ろうとします。

例)LG(スマートフォン市場)、ドクターペッパー(炭酸飲料市場)
ニッチャ特定の市場セグメントや顧客層に特化して、競争優位を築く企業です。ニッチャは、独自の製品やサービスを提供することで、競合他社と差別化を図ります。

例)メルセデス・ベンツ(高級車市場)、シグマ(高品質カメラレンズ市場)

これらの競争戦略は、企業が市場でどのような地位を狙い、どのようなアプローチを取るかによって異なります。

イノベータ理論

イノベータ理論は、新製品や技術が市場に浸透する過程を5つの顧客層に分けて説明する理論です。それぞれの顧客層は、イノベータ、アーリーアダプタ、アーリーマジョリティ、レイトマジョリティ、ラガードで、新しい技術や製品に対する受容度が異なります。

以下、それぞれの層について、スマートフォンの普及を例に説明します。

イノベータ
(革新者)
新製品や技術を最初に取り入れる人々で、リスクを恐れず、変化や革新を求めます。

例)最初のiPhoneが登場したとき、技術に対する情熱や新しいもの好きな性格を持つイノベータは、スマートフォンの可能性をいち早く理解し、最初に購入しました。
アーリーアダプタ
(初期採用層)
イノベータに次いで新製品や技術を取り入れる人々で、新しいアイデアに対して好奇心が強く、リーダーシップを発揮します。

例)iPhoneが一部の人々に受け入れられると、アーリーアダプタは新しい技術や製品の評価者として、早期にスマートフォンを導入しました。彼らはトレンドに敏感で、新しい製品を試すことに積極的です。
アーリーマジョリティ
(前期追随層)
新製品や技術が一定の評価を受けた後、比較的早い段階でそれらを取り入れる人々です。彼らは慎重であり、他のアーリーマジョリティの意見や経験を参考に判断します。

例)iPhoneがより一般的になるにつれ、アーリーマジョリティは、スマートフォンが日常生活に役立つことを認識し始め、次第に導入しました。彼らは新しい技術や製品に対して慎重で、十分な情報があることを確認した上で購入します。
レイトマジョリティ
(後期追随層)
新製品や技術が広く普及し、それらが既存のものに比べて明確な利点があることが証明された後に、やっと取り入れる人々です。

例)スマートフォンが市場で主流になった後、より保守的な価値観を持つレイトマジョリティは、慎重に新しい技術を試すようになりました。彼らは、新しい製品が周囲の人々に広く受け入れられてから導入することが一般的です。
ラガード
(遅滞層)
新製品や技術に非常に慎重で、それらが極めて一般的になるまで取り入れません。彼らは、伝統的な方法や製品にこだわる傾向があります。

例)ラガードは、新しい技術や製品に対して非常に慎重で、スマートフォンがほとんど普及してからも、機能限定の従来型携帯電話を使い続けることを選んだ人々です。彼らは、新しい技術に対して懐疑的で、導入に抵抗を感じることがあります。

イノベータ理論では、新製品や技術が市場で成功するためには、これら5つのグループの消費者に順番に訴求していくことが重要です。

特に、アーリーアダプターとアーリーマジョリティの間にある大きな隔たり「キャズム(Chasm)」を乗り越えることが、大衆市場での成功への鍵となります。

これは、アーリーアダプターが評価し、アーリーマジョリティがそれに続くことで、新製品や技術が広く受け入れられる可能性が高まるからです。

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