ブロードバンド
ブロードバンドとは、「広い帯域」という意味で、高速・大容量の通信を実現可能なインターネットサービスの総称です。
ブロードバンド接続にはいくつかの種類がありますが、ここではFTTHとCATVについて説明します。
FTTH
FTTH(Fiber To The Home:ファイバー・トゥ・ザ・ホーム)は、光ファイバーを用いた高速インターネット接続で、通信会社から直接、家庭やオフィスまで敷設された光ファイバーケーブルを利用します。
光ファイバーは光信号を使用するため、電磁波の影響を受けにくく、長距離でも大容量のデータを高速で伝送することができます。
FTTHは、高速なアップロードとダウンロード速度を提供し、一般的には最も高速なブロードバンド接続とされています。
光ファイバー
CATV(ケーブルテレビ)
CATVはケーブルテレビのインフラを利用したインターネット接続方法です。
CATVでは、同軸ケーブルを通じてテレビ放送信号とインターネットデータが送受信されます。
CATVは、FTTHに比べると速度が若干劣る場合がありますが、ケーブルテレビとインターネット接続を一つのインフラで提供できるため、コスト面でのメリットがあります。
どちらの接続方法も従来の電話回線(ダイヤルアップ接続)よりもはるかに高速なインターネット接続を提供します。
伝送速度(通信速度)は、データ伝送の速さを示す指標で、「bps(bits per second:ビット毎秒)」という単位で表現されます。
bpsは1秒間に何ビットのデータが送受信できるかを示し、速度が速いほどWebサイトの読み込みやファイルのダウンロードが早くなります。
伝送速度はインターネット環境やネットワークの状況によって変わります。
一般的な伝送速度として、FTTHでは最大で1Gbps以上が、CATVでは概ね最大100Mbps程度が出ます。ただし、これらの数値はプロバイダや契約プラン、地域により異なります。
モバイル通信
モバイル通信は、携帯電話やスマートフォンなどの端末でインターネットに接続するための技術です。
SIMカード
通信を行うためには、「SIMカード」や「eSIM(Embedded SIM)」といったものが必要です。
SIMカード(Subscriber Identity Module)は、携帯電話やスマートフォンに挿入する小さなカードで、電話番号や契約者情報、通信キャリアとの認証情報などが記録されています。通信キャリアから提供されたSIMカードを挿入することにより端末がネットワークに接続し、通話やデータ通信が可能になります。
一方、eSIM(Embedded SIM)は、「組み込みSIM」の意味で、物理的なSIMカードを必要とせず、デバイス内に直接SIM情報を組み込む方式です。eSIMをサポートしたデバイスでは、キャリアの設定をダウンロードすることで通信サービスを利用することができます。
4G/LTE・5G
モバイル通信には、「4G/LTE」や「5G」というそれぞれ通信速度や機能が異なる技術があります。
4Gは、通信速度や品質が大幅に向上した第4世代のモバイル通信規格です。LTE(Long Term Evolution)はその一つで、一般的には最大で100Mbps以上の通信速度が可能です。
一方、5Gとは、第五世代移動通信システムのことで、4G/LTEに代わる新しい通信技術です。
5Gは①高速化、②低遅延、③多接続を実現し、従来の通信技術と比べて大幅な進化が見られます。
- 高速化:従来の4Gに比べ、通信速度が大幅に向上し、最大で数ギガビット/秒のデータ転送が可能になります。
- 低遅延:通信の遅延時間が短縮され、リアルタイムな通信が可能になります。これは自動運転車や遠隔医療などの用途において重要な要素となります。
- 多接続:同時に多数のデバイスがネットワークに接続できるようになります。IoTデバイスの増加に対応できることが期待されています。
5Gの普及により、リアルタイムの映像配信、遠隔医療、自動運転、スマートシティなど、様々な技術やサービスが実現し、社会全体の効率化やイノベーションが促進されることが期待されています。
テザリング
また、スマートフォンなどのモバイル通信機器には、「テザリング」という機能があります。
これは、スマートフォンのインターネット接続を、他のデバイス(パソコンやタブレットなど)と共有することができる機能です。これにより、Wi-Fiが使えない場所でもインターネットに接続できます。
ただし、テザリングを利用すると、スマートフォンのデータ通信量が増えます。そのため、通信プランのデータ容量に注意しながら利用することが大切です。データ容量をオーバーすると、追加料金が発生したり、通信速度が低下することがあります。
テザリングは主に3つの方法で行うことができます。
- Wi-Fiテザリング:テザリングを行うデバイスがWi-Fiホットスポットとして機能し、他のデバイスがそのWi-Fiに接続することでインターネットアクセスを共有します。
- Bluetoothテザリング:テザリングを行うデバイスとインターネットアクセスを共有するデバイスとの間でBluetooth接続を使用します。この方法はWi-Fiテザリングに比べてデータ速度が遅い場合がありますが、消費電力が少ないという利点があります。
- USBテザリング:テザリングを行うデバイスをUSBケーブルで直接他のデバイスに接続します。この方法は安定した接続が可能で、デバイスが充電されるという利点がありますが、物理的な接続が必要です。
Wi-Fiテザリングの場合、提供されるWi-Fiの規格はテザリングを行うデバイスのハードウェアと、そのデバイスのソフトウェアがサポートする規格によって決まります。Wi-Fiテザリングを使用することで、周囲の複数のデバイスに対して柔軟にインターネット接続を提供することが可能になります。
MVNO
MVNO(Mobile Virtual Network Operator:モバイル・バーチャル・ネットワーク・オペレーター)とは、自前の通信設備を持たずに、大手キャリアのネットワークを借りてサービスを提供する携帯電話事業者のことです。
MVNOは、キャリアから卸価格で通信容量を購入し、自社ブランドでユーザーに提供します。
MVNOのサービスは、大手キャリアと比較して低価格で提供されることが多く、コストを抑えたいユーザーに人気です。
ただし、大手キャリアと比べて通信速度やカバー範囲が劣る場合があるため、利用環境やニーズに応じて選択することが重要です。
キャリアアグリゲーション
キャリアアグリゲーション(Carrier aggregation)は、モバイル通信技術において、複数の周波数帯を束ね、1つの伝送路と見なして同時に利用することで通信速度を向上させる技術です。
これにより、データ転送速度が向上し、より快適なインターネット接続が可能になります。
4G/LTEや5Gの通信では、キャリアアグリゲーションが一般的に用いられています。
ただし、キャリアアグリゲーションを利用するには、対応するモバイル端末とキャリアのネットワークが必要です。端末やキャリアによっては、利用できない場合もあります。
ローミング
ローミング(Roaming)は、携帯電話やスマートフォンなどのモバイルデバイスが、契約しているネットワーク提供者のサービスエリア外で使用される際に、他のネットワーク提供者の通信網を利用することを指します。
例えば、海外旅行中に現地の通信網を使って通話やデータ通信を行う場合、ローミングサービスを利用しています。
これには通常、追加の料金が発生しますが、最近ではローミング料金を含むプランも多く提供されています。
伝送時間の計算
データの伝送時間は、伝送するデータ量(ビット)を伝送速度(bps:ビット毎秒)で割ることで求められます。
例えば、140Mバイトのデータを1秒あたり20Mビット(20Mbps)の速度で送信する場合、伝送時間は以下のように計算できます。
まずデータ量と伝送速度を同じビットを基準にした単位に変換・統一します。つまり、データ量の単位をbitに変換します。(伝送速度の単位のbpsはbit基準になっています。)
ここでは伝送するデータがバイトなのでビットに変換します。
データ量: 140MB = 140 × 8 = 1120Mビット
伝送速度: 20Mbps
同じビット基準の単位に変換し終えたら、次にデータ量(ビット)を伝送速度(bps:ビット毎秒)で割って伝送時間を計算します。
伝送時間 = データ量(ビット) / 伝送速度(bps)
伝送時間 = 1120Mビット / 20Mbps
これを計算すると、伝送時間は約56秒です。したがって、140MBのデータを20Mbps(1秒あたり20Mビット)の速度で送信する場合、伝送時間は56秒かかることになります。
パケット通信の考え方
パケットとは、データ通信において、データを小さな単位に分割して送受信する際の単位です。
パケットは、データ本体(ペイロード)に加えて、送信先や送信元のアドレス、順序情報などの制御情報(ヘッダ)が含まれています。
パケット交換方式とは、通信ネットワークにおいて、データをパケットに分割し、それぞれのパケットを独立して送信する方法です。パケット交換方式の利点は、通信データを送受信している間しか回線を使用しないので、回線を専有することなく通信路の効率的な利用ができることです。
パケットは、ネットワーク上で異なる経路を辿って目的地に送られ、到着したパケットは再び元のデータに組み立てられます。
パケット交換方式と対比されるのが回線交換方式で、これは通信を行う前に送信元と送信先間で専用の通信路を確保し、通信が終了するまでその回線を維持する方式です。回線交換方式は、一度確保した回線の品質が保たれるため安定していますが、効率的でない場合もあります。
インターネットなどの現代のデータ通信ネットワークは、主にパケット交換方式を採用しており、複数の通信が同時に行われ、通信量の変動に柔軟に対応できるようになっています。
しかし、パケット交換方式では、通信の遅延やパケットの喪失などの問題も発生することがあります。
パケット通信を理解するために、郵便システムに例えて考えてみましょう。
あなたは友人に手紙を送りたいと思っています。しかし、文章がとても長くなってしまったため、一つの封筒には入りきりません。どうやって手紙を送ればよいでしょうか?
まず、あなたは手紙をいくつかの部分に分けるでしょう。それぞれの部分を別々の封筒に入れ、各封筒に友人の住所と自分の住所を記入します。そして、手紙のどの部分がどの封筒に入っているかを追跡するために、封筒に番号をつけるかもしれません。(例えば、「1/5」、「2/5」、「3/5」、「4/5」、「5/5」など)
これら全ての封筒を郵便局に持って行き、それぞれが別々に郵送されることになります。一部は近くの配送センターを経由し、他の一部は遠くの配送センターを経由するかもしれません。各封筒は異なる経路をたどり、異なる時間に友人の家に到着するかもしれません。
友人は封筒を受け取り、封筒の番号に従って手紙を元の順序に戻します。こうして、友人はあなたが送った長い手紙を正確に読むことができます。
これがパケット交換の基本的な考え方です。データは小さなパケットに分割され、それぞれのパケットはインターネット上の異なる経路を通って送信先に送られます。パケットが送信先に到達すると、それらは正しい順序に再構成され、オリジナルのメッセージまたはデータが再現されます。
関連用語
VoIP(Voice over Internet Protocol)は、インターネットを使って音声通話を行う技術です。
音声データをパケットに分割し、インターネット上で転送することで、従来の電話回線よりも低コストで高品質な通話が可能になります。
VoIPは050で始まるIP電話などで利用されています。
IP電話は、インターネットだけでなく、企業内LANのような閉じたネットワーク上にも構築することが可能で、さらに一般の公衆交換電話網(PSTN)とも相互通話が可能です。
MIMO(Multiple Input Multiple Output)は「多入力多出力」という意味で、複数の送信アンテナと複数の受信アンテナを使ってデータを送受信する無線通信技術です。
この技術により、データの送信速度と通信の信頼性が向上します。
具体的には、一つの信号が干渉や物理的障害物によってブロックされた場合でも、他の信号が正常に受信されることで通信の安定性が保たれます。
Wi-Fiや4G、5Gの通信で広く利用されています。
マルチホップ通信は、信号を直接送信元から目的地まで送るのではなく、複数の中継点を経由して送信する方法です。
各中継点は、信号を受け取り次のポイントへとリレーする役割を果たします。
これにより、長距離の通信や障害物がある環境でも信号を効果的に伝送できるため、IoTや一部のWi-Fiネットワーク設計で利用されています。
マルチホップは通信の範囲を広げ、信号の到達可能性を高めます。
輻輳(ふくそう)とは、一般に物が一か所に集中して混雑する状態のことを意味します。
通信の文脈における輻輳とは、ネットワーク上でデータの通信量が増加し、その結果としてデータの流れが混雑する状況を指します。これはラッシュアワー時の道路の状態と似ています。
ネットワークが輻輳すると、次のようなことが起こります。
- データの送受信が遅くなる。
- 通信が途中で切断されることがある。
- データが途中で失われることがある。
輻輳の原因としては、例えば、大きな動画ファイルをたくさんの人が同時にダウンロードしたり、特定のイベント時に多くの人が同時にオンラインにアクセスすることなどが考えられます。
ネットワークの設計や管理においては、輻輳の発生を防ぐためのさまざまな対策が必要となります。