会計・財務① 財務諸表・貸借対照表

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財務諸表

財務諸表は、会社の財務状況や業績をまとめた報告書の一種です。

これは、主に投資家、クレジット会社、従業員、取引先など、会社のステークホルダー(利害関係者)へ報告するために作成されます。ステークホルダーは、財務諸表を通じて会社の経済的な健全性や利益性、リスクなどを評価できます。

財務諸表は大きく4つの表から構成されています。それは、①貸借対照表(バランスシート)②損益計算書③キャッシュフロー計算書、④株主資本等変動計算書です。これらはそれぞれ、会社の資産や負債、収益や費用、現金の流れ、株主資本の変動を示しています。

多くの国では、公開企業に対してこれらの財務諸表の開示が法律で義務付けられています。これをディスクロージャー(情報開示)と呼びます。開示された財務諸表は、投資家が投資判断をするための重要な情報源となります。

また、企業が複数の子会社を持つ場合、親会社と子会社の財務情報を一つにまとめたものを連結財務諸表と呼びます。これにより、企業グループ全体の経済的な状況が明らかになります。連結財務諸表は、投資家が企業グループ全体の業績や資産状況を理解する上で重要なツールとなります。

本項では、財務諸表の①貸借対照表(バランスシート)、②損益計算書、③キャッシュフロー計算書について詳しく説明します。

貸借対照表

貸借対照表(バランスシート)は、企業のある時点での資産・負債・純資産の状態を示す表です。

例えるならば企業の「健康診断書」のようなもので、企業の経済的な健全性や安定性を判断するための基本的な情報を提供します。

単位 百万円
資産の部負債の部
流動資産合計100流動負債合計160
固定資産合計500固定負債合計200
純資産の部
株主資本240

※貸借対照表の例(左側に資産の部、右側上部に負債の部、右側下部に純資産の部)

次に貸借対照表に記述されている資産、負債、純資産についてそれぞれ説明します。

資産

資産とは、企業が保有する現金、売掛金、土地、建物、設備などの経済的価値があるもの全てを指します。

これらはさらに流動資産と固定資産に分けられます。

流動資産は短期間(通常1年以内)に現金化可能な資産(現金、預金、売掛金など)を指し、固定資産は長期間(1年以上)にわたりビジネスで使用される資産(建物、設備など)を指します。

資産流動資産一年以内に現金化できる資産で、現金、銀行預金、売掛金、在庫などがこれに該当します。
固定資産一年以上の長期にわたって使用される資産で、企業の長期的な運営に寄与します。土地、建物、機械、車両、ソフトウェアなどがこれに該当します。

負債

負債とは、企業が外部へ返済する義務がある借金や債務のことです。

これらも短期間(1年以内)に支払う必要がある流動負債と、長期間(1年以上)支払い義務が発生しない固定負債に分けられます。

負債流動負債一年以内に返済が必要な負債で、買掛金、短期借入金、未払いの経費などが該当します。
固定負債一年以上支払い義務が発生しない負債で、長期借入金や社債などがこれに該当します。企業が長期的に負っている経済的義務を示します。

純資産

純資産は、資産から負債を差し引いた残りの部分で、企業が自己資金として保有している資産を指します。

これは、投資家から集めた資本金や、企業が過去に稼いで保持している利益(利益剰余金)などから成り立ち、企業の財務的健全性を反映します。

貸借対照表の基本的な等式は、「資産(左側) = 負債(右側上) + 純資産(右側下)」です。これは、企業が所有するすべての資産は、借金(負債)と自己資金(純資産)で賄われているという意味です。

バランスシート

貸借対照表はバランスシートとも呼ばれますが、この「バランス」とは、

「資産 = 負債 + 純資産」

この等式が常に成り立つということ、つまり左側(資産)と右側(負債+純資産)が常に等しいというバランスの原則を意味します。

「バランスシート」という名前は、このバランスの原則に由来します。

具体的な例として、企業が100万円の現金(資産)を保有していて、そのうち50万円が銀行からの借金(負債)、残りの50万円が株主からの出資(株主資本)であれば、この等式は成り立ちます。

貸借対照表は、企業の財務健全性やリスクを評価する上で重要なツールとなります。

他人資本・自己資本
単位 百万円
資産の部負債の部
流動資産合計100流動負債合計160
固定資産合計500固定負債合計200
純資産の部
株主資本240

負債は他人資本、純資産は自己資本と呼ばれることがあります。

上に記した貸借対照表の赤字で強調した部分が「他人資本」です。企業が外部から借り入れた資金(負債)のことで、他人からの借金を指します。

青字で強調した部分が「自己資本」です。企業が自己の資金で運用している部分を指し、株主資本(資本金、利益剰余金など)を中心に構成されます。これは、企業が自己の資源でビジネスを運営している部分を表しています。

与信取引

与信取引とは、企業が顧客に提供した商品・サービスの代金の支払いを、その場で行うのではなく、後日に延期する取引のことで、これにより顧客は即時の支払いなしに商品やサービスを受けることができます。

しかし、このような取引は企業に財務リスクをもたらす可能性があるため、与信管理が不可欠です。

与信管理とは、企業が顧客に与える信用の度合いを評価し、管理するプロセスです。これには顧客の信用状態の評価、支払い能力の監視、貸し倒れリスクの最小化などが含まれます。

与信管理の一環として、企業は与信限度額を設定します。これは特定の顧客に対して許容される最大の信用額であり、顧客の過去の支払い履歴や財務状態に基づいて決定されます。

与信限度額を設定することで、企業は貸し倒れのリスクを管理し、健全な財務運営を維持することができます。

与信取引の具体例

与信取引の具体例を、一般的な消費者の場合と企業間の場合の両方のケースで説明します。

  1. 一般的な消費者向けの与信取引の例:
    • 例えば、あなたが家電量販店でテレビを購入するとき、クレジットカードで支払う場合がこれに該当します。店舗は商品を提供し、あなたはその場で代金を支払う代わりに、クレジットカード会社を通じて後日支払います。この取引では、店舗があなたに対して与信を行い、即時の現金決済ではなく将来のクレジットカード決済を受け入れています。ここでの与信取引は、商品の提供と将来の支払いの約束に基づいて成立しています。
  2. 企業間の与信取引の例:
    • ある製造業者が小売業者に向けて衣類を大量に供給するケースを考えます。製造業者は小売業者に30日間の支払い期限を設定します。小売業者はこの期間内に衣類を販売し、その収益で製造業者に代金を支払います。この場合、製造業者は小売業者に与信を行い、即時の代金回収ではなく後日の支払いを受け入れていることになります。

これらの例では、与信取引がいかにして購入者に支払いの柔軟性を提供し、ビジネスの流れをスムーズにするかが示されています。

買掛金・売掛金

買掛金かいかけきん」と「売掛金うりかけきん」は与信取引によって生じる債務と債権のことを指します。

買掛金とは、買い手側の企業が商品やサービスを購入し、その支払いを後日に延ばすことで発生する債務のことを指します。

逆に、売掛金は、売り手側の企業が商品やサービスを提供し、その収入を後日に受け取ることで発生する債権のことを指します。

「毎月20日締め翌月末払い」のケースを考えた場合、この契約に基づき、たとえば1月1日から1月20日までの間に受け取ったサービスや商品に対する支払いは、次の月の末日、つまり2月の末日に行われます。

具体的な例を考えてみましょう。ある企業が1月10日に100万円分の商品を購入し、同じ月の15日に50万円分の商品をさらに購入したとします。これらの取引は「20日締め」の範囲内にあるため、これらの支払いは2月末日にまとめて行われ、合計150万円の買掛金が発生します。

さらに、その企業が1月21日に200万円分の商品を購入した場合、この取引は次回の「締め日」の範囲に入るため、この支払いは3月末日に行われます。

買掛金・売掛金の「かけ」とは「やりかけ」「食べかけ」「飲みかけ」「書きかけ」などと同じく「~している途中」の意味があります。まだ処理が完全に終わっておらず、宙ぶらりんになっているようなイメージです。

つまり、掛取引を用いた売買は支払い済んだときに完了し、それまでは掛け(途中)の状態になります。

我々が日常生活を送るうえでは、買いかけたり、売りかけたりすることはないので、少しイメージしづらいかもしれません。

なぜ買掛金・売掛金を利用した取引が必要なのか?

買掛金・売掛金を用いる与信取引あるいは掛取引)は、月末になどにまとめて支払いを行う便利な手段です。

大きな取引や頻繁な取引を一括で管理でき、現金を取引の度に手渡すリスクや事務処理の煩雑さを避けられます。

ただし、この取引は相手への「信頼」が必要です。与信取引という形で商品を先に受け取り後で支払う場合、必ず期日までに全額支払うことが求められます。また、売掛金として商品やサービスを提供した場合、代金が回収できないリスクを理解しておく必要があります。

与信取引は便利ですが、売り手側を不安にさせぬよう期日までに必ず支払いをし、与信取引の金額が支払い不能にならないよう注意が必要です。

安全性を表す財務指標

財務指標とは、企業の財務状態や経営成績、効率性などを数値で表したもので、経営分析や投資判断に役立ちます。

貸借対照表から計算できる流動比率固定比率自己資本比率は、企業の財務状況を分析するための主要な財務指標です。これらは企業の健全性を評価したり、財務リスクを評価したりする際に用いられます。

例えるならば、企業の健康状態をチェックするためのツールのようなものと言えます。

財務指標

財務指標は、BMIや血圧のような健康診断の指標や、スポーツの成績分析で用いられる打率やシュート決定率のように、企業の財務的な健康状態やパフォーマンスを評価するための重要なツールです。

これらは企業の経営状態を理解し、将来の成功への道筋を示すのに役立ちます。

流動比率

\( \displaystyle {}\textbf{流動比率(%)} = \frac{\textbf{流動資産}}{\textbf{流動負債}} \times100 \)

流動比率は、企業が一年以内に返済が求められる負債(流動負債)に対して、一年以内に現金化可能な資産(流動資産)がどれだけあるかを示す指標です。

この値が100%以上ならば、短期的な負債を支払う能力があるとされます。

単位 百万円
資産の部負債の部
流動資産合計100流動負債合計160
固定資産合計500固定負債合計200
純資産の部
株主資本240

上の貸借対照表において、企業Aの流動資産は100百万円、流動負債は160百万円です。

この場合、流動比率は「100百万円 ÷ 160百万円 × 100 = 62.5%」となります。

これは、短期的な負債を支払う能力が限定的であることを示しています。(赤字:割られる数、青字:割る数)

固定比率

\( \displaystyle {}\textbf{固定比率(%)} = \frac{\textbf{固定資産}}{\textbf{自己資本}} \times100 \)

固定比率は、企業が長期にわたって使用する資産(固定資産)が、自己資本(企業が自ら調達した資金)でどれだけ賄われているかを示す指標です。

この値が100%以下であれば、固定資産が自己資本だけで賄われているということで、企業の財務健全性が高いとされます。

単位 百万円
資産の部負債の部
流動資産合計100流動負債合計160
固定資産合計500固定負債合計200
純資産の部
株主資本240

企業Aの固定資産は500百万円、自己資本は240百万円です。

この場合、固定比率は「500百万円 ÷ 240百万円 × 100 = 208.3%」となります。

これは、固定資産が自己資本を超えていることを示し、一定のリスクが存在することを示唆しています。(赤字:割られる数、青字:割る数)

自己資本比率

\( \displaystyle {}\textbf{自己資本比率(%)} = \frac{\textbf{自己資本}}{\textbf{総資産}} \times100 \)

自己資本比率は、全資産に対する自己資本の割合を示す指標で、企業の財政力や倒産リスクを見るために使われます。

この値が高いほど、自己資本によって資産が賄われており、倒産リスクが低いとされます。一般的に、この値は20%以上であれば健全とされています。

単位 百万円
資産の部負債の部
流動資産合計100流動負債合計160
固定資産合計500固定負債合計200
純資産の部
株主資本240

企業Aの自己資本は240百万円、総資産は600百万円です。(流動資産100百万円+固定資産500百万円=総資産600百万円として計算)

この場合、自己資本比率は「240百万円 ÷ 600百万円 × 100 = 40%」となります。

この比率が40%ということは、企業が自己資本によって資産の4割を賄っており、残りの6割が負債によって賄われていることを示しています。(赤字:割られる数、青字:割る数)

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