要件定義プロセス・調達計画

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要件定義プロセス

要件定義プロセスは、企画プロセスで策定されたシステム化計画を踏まえて、利用者及び他の利害関係者が必要とするシステムの目的や機能、性能などを明確にし、合意を形成するプロセスです。

要件(ようけん)とは、「必要とする条件」のことを指します。

つまり、「システム要件」とは、あるシステムに必要な機能や性能のことを、「ソフトウェア要件」とは、あるソフトウェアに必要な機能や性能のことを意味します。

要件定義には主に業務要件定義、機能要件定義、非機能要件定義の3つの要素が含まれます。

業務要件定義業務要件定義では、システムがどのような目的や課題を解決するために開発されるのかを明確にします。これにより、システム開発の全体的な方向性が決まります。

例えば、「顧客管理を効率化する」や「在庫管理の最適化」などの目的が業務要件になります。
機能要件定義機能要件定義では、業務要件を具体的に実現するためにシステムがどのような機能を持つべきかを詳細に定義します。これにより、システム開発の具体的な内容が明確になります。

例えば、「顧客情報の登録・編集・削除機能」や「在庫状況の一覧表示機能」などが、業務要件「顧客管理の効率化」や「在庫管理の最適化」を実現するための機能要件として挙げられます。
非機能要件定義非機能要件定義では、システムの性能や品質、利便性など、機能以外の要素を明確にします。これにより、システム開発の品質基準が設定されます。

例えば、システムの「レスポンス速度が2秒以内であること」、「高度なセキュリティ対策を施すこと」、「直感的な操作性を持つこと」などが非機能要件に該当します。
要件定義プロセスの例

要件定義プロセスの業務要件定義、機能要件定義、非機能要件定義について、具体例を挙げて説明します。

例として、オンラインショッピングサイトの開発を考えます。

  1. 業務要件定義: オンラインショッピングサイトの業務要件定義では、開発の目的や課題解決を明確にします。例えば、
  • 商品のオンライン販売を可能にする
  • 顧客とのコミュニケーションを円滑にする
  • 売上管理や在庫管理を効率化する
  1. 機能要件定義: 機能要件定義では、業務要件を具体的に実現するためにシステムがどのような機能を持つべきかを詳細に定義します。例えば、
  • 商品の検索・閲覧・カートへの追加・購入機能
  • 顧客アカウントの登録・編集・ログイン・ログアウト機能
  • レビューやコメントの投稿・閲覧機能
  • 在庫管理や売上データの集計・分析機能(管理者向け)
  1. 非機能要件定義: 非機能要件定義では、システムの性能や品質、利便性などを明確にします。例えば、
  • ページの読み込み速度や応答時間
  • スマートフォンやタブレットなどのデバイスへの対応(レスポンシブデザイン)
  • セキュリティ性能(例:データの暗号化、SSL証明書の適用)
  • ユーザビリティやアクセシビリティの向上(例:直感的な操作性、視覚障害者への対応)

これら3つの要素を適切に定義し、開発チームや利害関係者と共有することで、プロジェクトの成功確率が高まります。

調達

調達とは、依頼元となる企業や組織が、必要な製品やサービスを外部のベンダ(システムの提供者)から購入するプロセスです。

調達プロセスは、ニーズの特定、仕様の設定、ベンダの選定、契約締結、納品と支払いまでの一連の手続きを含みます。

調達プロセスの中で、次のようなドキュメントがやり取りされます。

RFI
Request for Information
(情報提供依頼)
RFIは、依頼元がシステム化の目的や業務概要などを示すことによって、ベンダにシステムに関する基本的な情報の提供を依頼する文書です。これを通じて依頼元は、新システムの実現イメージやベンダが保有する適用可能な技術とその動向などの情報を確認することができます。
RFP
Request for Proposal
(提案依頼書)
RFPは、依頼元が具体的なプロジェクトに対して、ベンダに提案書の提出を求める文書です。RFPには、プロジェクトの背景、目的、システム要件、調達要件、評価基準、提案書の提出方法や期限などが記載されます。
提案書提案書は、RFPを受けてベンダが依頼元に対して提出する文書で、プロジェクトに対するベンダのアプローチや実施計画、期間などを詳細に説明します。依頼元は、提案書をもとにベンダを評価し、最終的な選定を行います。
見積書見積書は、提案書に基づいてベンダが提出する文書で、システムの開発や保守・運用などにかかる費用、納期などが記載されます。見積書は、契約締結の際の交渉材料となります。

重み付け評価

重み付け評価は、調達のベンダ選定の際などに用いられる方法です。

具体的には、複数の評価基準に対して、それぞれの重要性(重み)を割り当て、総合的な評価を行います。これにより、評価基準ごとの相対的な価値を考慮して、最適な選択肢を決定することができます。

具体例

あなたは、3つのスマートフォン(A、B、C)から1つを選ぶことを検討しています。選択基準は以下の通りです。

  1. 価格
  2. バッテリー寿命
  3. カメラの品質

まず、各基準に重みを割り当てます。この例では、価格が最も重要であるとし、以下のように重み付けします。

  1. 価格(重み: 0.5)
  2. バッテリー寿命(重み: 0.3)
  3. カメラの品質(重み: 0.2)

次に、各スマートフォンを各基準で評価します。評価は10点満点とします。

スマートフォンA:

  1. 価格: 8点
  2. バッテリー寿命: 6点
  3. カメラの品質: 7点

スマートフォンB:

  1. 価格: 7点
  2. バッテリー寿命: 9点
  3. カメラの品質: 5点

スマートフォンC:

  1. 価格: 5点
  2. バッテリー寿命: 7点
  3. カメラの品質: 9点

それぞれのスマートフォンの総合評価を計算します。

スマートフォンA:(8 x 0.5) + (6 x 0.3) + (7 x 0.2) = 6.9 
スマートフォンB:(7 x 0.5) + (9 x 0.3) + (5 x 0.2) = 6.8 
スマートフォンC:(5 x 0.5) + (7 x 0.3) + (9 x 0.2) = 6.1

この重みづけ評価により、スマートフォンAが最も高い総合評価(6.9)を得たため、最適な選択肢であると判断できます。

評価項目重みスマートフォンAスマートフォンBスマートフォンC
価格0.58点7点5点
バッテリー寿命0.36点9点7点
カメラの品質0.27点5点9点
評価点6.9点6.8点6.1点

関連用語

グリーン調達・グリーン購入

グリーン調達とグリーン購入は、環境に配慮した商品やサービスを選んで購入する取り組みです。これにより、企業や組織は環境負荷の低減に貢献し、持続可能な消費を促進します。

グリーン調達

グリーン調達は、企業が自社の運営や製品の製造に必要な原材料や製品を、環境に優しい基準や条件を満たすものから選ぶプロセスを指します。これには、再生可能な資源から作られた材料の使用、低汚染・低エネルギー消費製品の選択、廃棄物の最小化などが含まれます。

グリーン購入

グリーン購入は、消費者や公共機関が環境に優しい製品やサービスを意識的に選び購入する行動です。例えば、エネルギー効率の高い家電製品の選択や、環境保護に配慮した製造プロセスを経た製品の購入がこれにあたります。

両者は環境保護の観点から重要であり、環境に対する意識の高い購入決定を通じて、自然資源の持続可能な利用を促し、地球温暖化の抑制や生物多様性の保護に寄与します。

納品書・検収書・請求書

契約が締結された後、支払までに発注側と受注側の間で交わされる書類は、納品書、検収書、請求書です。

納品書:

納品書は、受注側が発注側に対してシステム開発の成果物を納品した際に提出する書類です。この書類には、納品された商品やサービスの詳細(種類、数量、納品日など)が記載されます。納品書は、納品が完了したことを証明するために使用されます。

検収書:

検収書は、発注側が納品された成果物を検査し、契約通りに納品されたことを確認した後に発行する書類です。この書類には、発注側の担当者が納品物を検査し、それが要求された仕様や品質基準を満たしていることを認めた旨が記載されます。

請求書:

請求書は、受注側が発注側に対して支払いを請求するために提出する書類です。この書類には、提供されたサービスや商品の詳細と、それに対する支払い額が記載されます。検収が完了した後、受注側は発注側に対して請求書を送付し、契約に基づいた支払いを求めます。


これらの書類は、納品から支払いまでのプロセスを一連の流れとして管理し、取引の各段階を明確にします。正確に管理することで、問題発生時の追跡が容易になり、取引の透明性と信頼性が向上します。

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