業務プロセスとモデリング
業務プロセスとは、企業や組織が特定の目標を達成するために行う、一連の活動や作業の流れのことです。例えば、商品の注文から配送までの一連のステップが業務プロセスにあたります。
業務プロセスのモデリングとは、業務プロセスやビジネスの仕組みを視覚的に表現する手法で、後述するDFDやBPMNなどの図表を使ってプロセスの流れを明確化します。
これにより、業務プロセスを理解しやすくし、関係者間で解釈を共有できるようにすることで、効率化や改善のための検討材料を得ることができます。
モデリング手法
DFD
DFD(Data Flow Diagram:データフローダイアグラム)は、その名前が示すように、業務でデータがどのように動いているかを表す図です。
業務の中でデータがどのように処理され、どこに格納され、どのように移動しているかを視覚的に示します。これにより、データの流れを簡単に理解でき、システムの設計や改善が容易になります。
ただし、DFDではデータの流れは理解できますが、作業の順番は記述できません。
データフロー | データの移動経路を表します。データの内容を表す名前を付けます。 | |
プロセス(処理) | データを処理する機能です。処理の名前を付けます。 | |
データストア | データが一時的または恒久的に蓄積される場所です。蓄積するファイルの名前を付けます。 | |
外部エンティティ | システム外部のデータの発生源や出力先、つまりシステムとやり取りをする外部の要素を指します。対象の名前を付けます。 |
以下の図は、とあるスポーツジム「サンプルジム」における会員登録のDFDを表しています。
データがどのように流れ、処理されるかに焦点が当てられています。
BPMN(ビジネスプロセスモデリング記法)
BPMN(Business Process Modeling Notation:ビジネスプロセスモデリング記法)は、業務の手順や関係者(役割)を表現する図です。
業務の流れや、誰がどのような役割を担当しているかをわかりやすく描画します。これにより、業務プロセス全体を把握しやすくなり、効率化や改善が進めやすくなります。
また、BPMNはOMG(Object Management Group)によって維持されており、国際規格ISO/IEC 19510として標準化されています。
BPMNは、タスク(作業)、イベント(発生する事象)、ゲートウェイ(分岐や統合)、シーケンスフロー(タスク間の順序)、スイムレーン(関係者の役割)などの要素を使用して業務プロセスを視覚化します。
下記は、DFDでも触れたサンプルジムの受付の流れです。「業務の流れと役割分担」に焦点が当てられています。
要するに、DFDは「データの流れ」に焦点を当てた図で、BPMNは「業務の流れと役割分担」に焦点を当てた図です。
両者を組み合わせることで、業務プロセスの理解や改善が効果的に進められます。
BPMNのほかに業務プロセスの「業務の流れと役割分担」を表現する図として、UML(Unified Modeling Language)のアクティビティ図があります。
アクティビティ図は元々ソフトウェア開発やシステム設計の分野でプロセスの流れや動作を視覚的に表現するために開発されました。これにより、開発者やシステムアナリストはシステムの動作やプロセスの流れを明確に理解し、設計することができます。
しかし、その汎用性と視覚的な表現の明確さから、アクティビティ図は後に業務プロセスモデリングの領域でも利用されるようになりました。業務プロセスの流れ、決定点、並列処理などを表現するのに適しており、ビジネスアナリストやプロジェクトマネージャーが業務の効率化や最適化を図る際に有効なツールとして使用されています。
※一方で、BPMNは業務プロセスに特化しており、業務プロセスのモデリングにおいてはUMLのアクティビティ図よりも適していると考えられることが多いです。
アクティビティ図では、アクティビティ(活動)、決定ノード(分岐点)、同期バー(並列処理の開始と終了)、開始点と終了点などの要素を使って、プロセスの流れを表現します。
業務プロセスの分析
業務プロセスの分析には以下のような方法があります。
BPR
BPR(Business Process Re-engineering:ビジネスプロセスリエンジニアリング)は、企業の業務プロセスを抜本的に見直し、効率化や改善を図るアプローチです。
従来のやり方に固執せず、全く新しい方法で業務を再設計し、パフォーマンスの向上を目指します。
例えば、複数の部門をまたぐ業務の手順を大幅に簡略化することで、作業効率や顧客満足度を向上させることができます。
BPM
BPM(Business Process Management:ビジネスプロセスマネジメント)は、業務プロセスを継続的に監視、分析、改善するための経営手法です。
BPMでは、業務プロセスを定期的に評価し、必要に応じて改善策を実施します。
これにより、企業は柔軟性を保ち、市場や環境の変化に迅速に対応できるようになります。
業務プロセスの分析をまとめると、
BPRは業務プロセスの抜本的な改革、BPMは継続的な改善を指します。
これらの概念は、それぞれ異なる目的とアプローチで業務プロセスの最適化を図ります。
ITの有効活用
IT を活用した、業務改善や業務効率化を図るための様々な方法
グループウェア
グループウェアは、企業や組織内で情報共有やコミュニケーションを助けるソフトウェアのことです。
このソフトウェアの主な目的は、組織内のコミュニケーションを効率化し、情報の共有、スケジュールの調整、ドキュメントの管理、タスクの配布と追跡を簡単にすることです。
グループウェアには、スケジュール管理、メール、ファイル共有、掲示板、ビデオ会議などの機能が含まれます。
これにより、チームのメンバーはリアルタイムで情報を共有し、効率的なコラボレーションが可能になります。
RPA
RPA(Robotic Process Automation:ロボティック・プロセス・オートメーション)は、人間が行っていた繰り返し作業や単純な業務を自動化するためのソフトウェア技術です。
ソフトウェアロボットを使って、データ入力やファイルのダウンロード・アップロード、帳票処理などのルーチンワークを効率的に行うことができます。
これにより、人間はより付加価値の高い業務に集中できるようになります。
BYOD
BYOD(Bring Your Own Device)は、「自分のデバイスを持ち込む」という意味で、従業員が自分のスマートフォンやタブレット、ノートパソコンなどの個人所有のデバイスを職場で使用することを指します。
BYODは、従業員が自分のデバイスを使い慣れているため効率が上がることや、企業がデバイスの購入費用を節約できることなどのメリットがありますが、セキュリティ対策が重要になります。
シャドーITとは、企業や組織の正式なIT部門の承認を経ずに、個々の従業員や部署が独自に導入・使用するITシステムやアプリケーションのことを指します。
シャドーITには、従業員が自分たちにとって使いやすいツールを選べるという利点がありますが、情報漏洩やセキュリティリスク、コンプライアンス違反といった問題が潜んでいます。
ライフログ
ライフログとは、個人が日常生活での出来事や行動、感情、健康状態などを時系列で記録することです。
ライフログは、スマートフォンアプリやウェアラブルデバイスを使って、自分の生活の様々な側面を追跡・管理するのに役立ちます。
例えば、運動量や睡眠の質、食事の内容などを記録することができます。これにより、自分の生活習慣を改善したり、目標を達成するためのサポートとなります。
ライフログの例としては、家計簿アプリでの支出管理、カロリー摂取量の記録、勉強時間の追跡などがあります。また、写真やSNS投稿、電子メールなども、自分の生活や思い出を記録するライフログの一部となります。
シェアリングエコノミー
シェアリングエコノミーは、個人や企業が持っている未活用の資源(空き部屋、車、スキルなど)を他者と共有・貸し出しすることで、効率的な利用を促進する経済システムです。
これは「所有する」より「共有・アクセスする」を重視する考え方に基づいています。例えば、自分の車を特定の時間で他人と共有したり、空いている部屋を短期間貸し出したりすることが含まれます。
インターネットを介したプラットフォームが、シェアリングエコノミーの拡大を支えており、AirbnbやUberなどが代表的な事例として知られています。