システムの評価指標③ システムの経済性・性能

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システムの経済性

システムの経済性は、イニシャルコスト、ランニングコスト、およびTCO(Total Cost of Ownership:総所有コスト)という概念を用いて評価されることが多いです。

これらの言葉を使って、システムの経済性について説明します。

イニシャルコスト

イニシャルコストとは、システム導入時に発生する初期費用のことです。

具体的には、ハードウェアやソフトウェアの購入費用、設置費用、システム導入に関するコンサルティング費用などが含まれます。

例:企業が新しい会計システムを導入する際、システムのライセンス購入費用や導入コンサルティング費用がイニシャルコストに該当します。

ランニングコスト

ランニングコストは、システム運用時に発生する継続的な費用のことで、電力消費費、メンテナンス費用、アップデート費用、人件費などが含まれます。

例:先述の会計システムの場合、運用時に発生するサーバーの電力費用やシステム管理者の人件費、システムの定期メンテナンス費用などがランニングコストに該当します。

TCO(Total Cost of Ownership)

TCOは、システムを導入・運用する際に発生するすべての費用を合計した総所有コストを指します。

イニシャルコストとランニングコストを含めた、システムのライフサイクル全体でのコスト評価が可能です。

例:先述の会計システムにおいて、システム導入から廃棄までの全期間にわたって発生するイニシャルコストとランニングコストを合計した金額が、そのシステムのTCOになります。


システムの経済性を評価する際には、イニシャルコストだけでなく、ランニングコストやTCOも考慮することが重要です。これにより、長期的な視点でのコスト効果や投資対効果を判断することができます。

TCOが重要視されるようになった理由

現在では、システムの経済性の評価において、TCOの概念が重視されるようになってきています。この理由は、システムの総コストにおいて、初期費用に比べて運用費の割合が増大したからです。

1980年代から1990年代初頭にかけて、多くの企業や組織では、システムのコスト評価に際して、主にハードウェアやソフトウェアの購入などの初期投資に重点を置いていました。この時期、運用費用(メンテナンス、アップデート、トレーニング、サポートサービスなど)はあまり重要視されていませんでした。

しかし、1990年代中頃から2000年代にかけて、システムの長期的な運用コストが初期費用を上回るケースが多くなりました。特に、高度化・複雑化するITシステムでは、保守、サポート、アップグレード、エネルギー消費などの継続的な費用が増加しました。

このため、企業や組織はシステム投資の決定において、初期費用だけでなく、運用費用を含めた総所有コストを考慮するようになり、TCOの概念が重要視されるようになりました。

システムの性能

ベンチマークテスト

ベンチマークテストは、コンピューターやソフトウェアの性能を標準化されたテストで客観的に評価・比較する方法です。

「ベンチマーク(benchmark)」という言葉は、元々は測量で使われる「基準点」に由来します。ITの分野では、製品やシステムの性能を比較するための基準となるテストを指します。

ベンチマークテストは、製品選択やシステム改善の際に役立ちますが、実際の使用状況とテスト結果との整合性を確認することが重要です。テスト結果を適切に解釈し、実用性と照らし合わせることで、最適な製品やシステム選択が可能になります。

ベンチマークテストの例としては、以下のようなものがあります。

  1. CPUベンチマーク: これはコンピュータの中央処理装置(CPU)のパフォーマンスを評価します。具体的には、CPUが1秒間に何回の計算を行うことができるかを測定します。例えば、CinebenchやGeekbenchといったベンチマークツールが存在します。
  2. グラフィックスベンチマーク: これはコンピュータのグラフィックスカードの性能を評価します。具体的には、一秒間に何フレームの画像をレンダリングできるかを測定します。例えば、3DMarkやUnigine Heavenなどのベンチマークツールがあります。
  3. ディスクベンチマーク: これはコンピュータのハードディスクやSSDのパフォーマンスを評価します。具体的には、データをどれくらい速く読み書きできるかを測定します。例えば、CrystalDiskMarkなどのベンチマークツールが存在します。
  4. ネットワークベンチマーク: これはコンピュータのネットワークインタフェースのパフォーマンスを評価します。具体的には、データをどれだけ速く送受信できるかを測定します。例えば、Speedtestなどのベンチマークツールがあります。

これらのベンチマークテストは、コンピュータの各部品の性能を評価し、改善の余地がある部分を特定するために使用されます。また、新しいハードウェアを購入する際の参考情報としても役立ちます。

ベンチマークテストの具体例

例えば、あなたが新しいスマートフォンを購入したいと思っているとします。

しかし、さまざまなメーカーから多くのモデルが販売されているため、どのスマートフォンが最も高性能であるかを知りたくなります。そこで、あなたはスマートフォンのベンチマークテストを行うことにしました。

ベンチマークテストは、スマートフォンの性能を評価するためのテストです。それはまるでスポーツ競技でのタイムや得点を比較するようなものです。あなたは異なるスマートフォンを選んで、同じタスクを実行する時間や処理能力、バッテリーの持続時間などを測定します。

例えば、あなたはスマートフォンの起動速度をテストするために、各モデルの電源ボタンを押してから完全に起動するまでの時間を計測します。また、ゲームのパフォーマンスをテストするために、同じゲームを実行し、フレームレートや処理の滑らかさを比較します。

ベンチマークテストの結果を見ることで、異なるスマートフォンの性能を客観的に比較することができます。これは、あなたが最もパワフルで高性能なスマートフォンを選択する際に役立ちます。


この具体例から分かるように、ベンチマークテストは製品やシステムの性能評価において重要な役割を果たします。それはまるで競技会の試合結果のように、異なる製品やシステムを公平に評価し、比較するための客観的な手段となります。

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