コンピュータと数学③ 場合の数と確率

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コンピュータと確率

数学の確率分野はコンピュータ科学において重要な役割を持ちます。

例えば、アルゴリズム設計、データ分析、信頼性の確保、暗号理論など、ランダム性や予測の不確実性を扱う多くの領域で確率の理論が活用されています。

これにより、より効率的で精度の高いコンピューティングシステムの構築が可能となります。

場合の数

場合の数とは、ある条件下において何通りの結果が得られるかを求める数学的な手法のことを指します。

場合の数は確率を計算する際の基本的な要素となります。

以下に、和の法則・積の法則順列組合せについて説明します。

和の法則積の法則

和の法則

この法則は、互いに排他的な事象、つまり、同時に起こりえない事象の場合の数を数えるために使われます。

具体的には、2つの事象A、Bが互いに排他的で、事象Aがm通りの結果を持ち、事象Bがn通りの結果を持つ場合、事象A、Bのどちらかが起こる場合の数はm+n通りとなります。

例1:サイコロを1回振って1が出る場合と2が出る場合を考えると、これらは互いに排他的な事象です。よって、サイコロを1回振って1または2のどちらかが出る場合の数は、1が出る場合の数の1通りと2が出る場合の数の1通りを合計して、2通りとなります。

例2:レストランでピザかパスタを選ぶことができるとします。ピザには4種類の選択肢があり、パスタには3種類の選択肢があるとします。和の法則により、ピザまたはパスタを選ぶ総選択肢の数は 4+3=7 通りです。

積の法則

積の法則とは、事象Aの起こり方がm通りあり、そのおのおのについて事象Bの起こり方がn通りあるとき、AとBが同時に起こる場合の数はm×nとなることです。

例1:サイコロを2回振る場合を考えます。最初の投げで6通りの結果があり、次の投げでも6通りの結果があるので、2回投げて得られる全ての結果の組合せは6×6=36通りとなります。

例2:あるレストランでメイン料理とデザートを選ぶことができるとします。メイン料理には5種類の選択肢があり、デザートには2種類の選択肢があるとします。積の法則により、メイン料理とデザートの組合せは 5×2=10 通りです。

例3:A地点からB地点に行くルートが3通りあり、B地点からC地点に行くルートが2通りある場合、A地点からC地点に行くルートの取り方は3×2=6 通りです。

階乗

順列と組合せを説明する前に、階乗について説明します。

階乗は数学において重要な概念で、特定の数から1までの全ての自然数の積を表します。階乗は「 ! 」という記号で表現されます。

階乗の定義は以下の通りで、自然数nの階乗(表記:n!)は、1からnまでの全ての自然数の積です。
その名のとおり、階段を一段ずつ下るように1ずつ小さい数を1になるまで掛け合わせます。

\( \displaystyle {}n! = n \times (n – 1) \times (n – 2) \times \ldots \times 3 \times 2 \times 1\)

また、特別なケースとして、0 の階乗(0!)は 1 と定義されます。

\( \displaystyle {}0! = 1\)

階乗は様々な場面で利用されますが、特に順列や組合せを考える際に必須の考え方となります。

例えば、n個の異なる項目を並べる順列の数を計算する場合や、あるn人のグループからr人を選び出す組合せの数を計算する際などに階乗が使われます。

階乗・順列・組合せ

次に説明する順列の求め方には階乗の式が含まれます。また、組合せを求める式には階乗を含む順列の式が含まれます。
つまり、階乗は順列・組合せを考える際の基本となります。階乗→順列→組合せの順にしっかりと理解しておきましょう。

順列

順列とは、ある集合からいくつかの要素を選び出して一列に並べる方法の数を表す数学的な概念です。

順列の場合、並べる順番が重要となります。たとえば、「A」と「B」という2つの要素がある場合、ABとBAは異なる順列として扱われます。

具体的には、n個の要素のうち、r個を選んで一列に並べる場合の数は、nPrと表され、以下の式で計算されます。

\( \displaystyle {}_n P_r = n \times (n-1) \times \cdots \times (n-r+1) = \frac{n!}{(n-r)!} \)

順列のおける階乗の意味合い

特別なケースとして、n個の要素のうち、すべての要素を選んで一列に並べる場合の数は階乗の式と同じになります。

\( \displaystyle {}_n P_n = n \times (n-1) \times \cdots \times (n-n+1) = \frac{n!}{(n-n)!} = \frac{n!}{0!}= n! \)

例えば5人の人がいて、その全員を一列に並べる場合、並べ方(順列)の数は5の階乗通りになります。

これは以下のように計算できます。

\( \displaystyle {}5! = 5 \times 4 \times 3 \times 2 \times 1 = 120\)

身近な順列の利用例

身近な順列の利用例として、以下のような状況が考えられます。

  1. レースや競技の順位: 例えば、10人の選手がいるレースで、1位、2位、3位を予想する場合、これは順序が重要な問題であり、順列を使用します。選手を選ぶ方法は 10P3 となります。
  2. 役員の選任: 例えば、5人のメンバーから委員長、副委員長、書記の役割を割り当てる場合、それぞれの役割に誰を選ぶかが問題になります。この場合の役割分担の方法は 5P3 となります。
  3. 旅行のスケジュール作成: 例えば、5つの観光地を訪れる旅行スケジュールを立てるとき、観光地を訪れる順序によって、それぞれ異なる旅行プランとなります。この場合、訪れる順序を決める方法は 5P5 となります。

上記のような場合、順序が問題になるので順列を使用します。順列では同じ要素を選んでもその並べ方が異なれば別の組合せとしてカウントされます。

組合せ

組合せとは、与えられたn個のものから、r個を選んで1つのグループとする場合の数を求める方法のことを言います。

特定の順序を考慮せずに、ある集合からいくつかの要素を選ぶ方法を数える際に使用されます。

組合せの数は、以下の式で求めることができます。

\( \displaystyle {}_n C_r = \frac{n!}{r! (n-r)!} = \frac{{}_n P_r}{r!} \)

ここで、nは全体の数、rは選ぶ数を表します。nCrnPrをその要素の数の階乗で割った形をしています。

たとえば、10人の中から3人を選んで1つのグループを作る場合、組合せの数は10C3で求められ、10! / {3!(10-3)!} = 120通りとなります。

身近な組合せの利用例

身近な組合せの利用例としては、以下のような場合が考えられます。

  1. 宝くじ: 宝くじのロト6などでは、43個の数字の中から6つの数字を選びます。ここでの組合せは43C6となります。この場合、選ばれた数字の順序は関係ありません。
  2. 仕事やプロジェクトのチーム編成: 例えば、10人のメンバーから5人のチームを組むとき、これは10C5の組合せとなります。ここでも、選ばれたメンバーの順序は問題となりません。
  3. メニューの選択: レストランで10種類の料理から3つ選ぶ場合、これは10C3の組合せとなります。料理の選び方は順序に関係なく、同じ料理を選んだ場合は同じ組合せとされます。

組合せでは順序が問題にならないため、選んだ要素の並び方は問題になりません。どの順序で選んでも同じ組合せとみなされます。

順列と組合せの簡単な例

ABCの3人がいる場合に、3人を選ぶ順列と組合せについて考えます。

1. 順列

順列は、選ぶ順序が重要な場合に使用されます。それぞれの人が異なる位置にいることが可能で、選ぶ順序が異なると異なる結果となります。

例: ABCの3人から3人を選ぶ方法は、ABC, ACB, BAC, BCA, CAB, CBA の6通りの順列があります。この場合、誰が最初で、誰が次で、誰が最後かが重要で、それによって異なる順列が得られます。

2. 組合せ

組合せは、選ぶ順序が重要ではない場合に使用されます。選んだ人のグループは同じであると見なされ、選ぶ順序は関係ありません。

例: ABCの3人から3人を選ぶ場合、選ぶ順序は関係ないので、1通りの組合せしかありません。結果は {ABC} の1組だけです。

確率

確率は、ある事象が起こる可能性の度合いを数値で表したもので、場合の数を用いて以下の式で求めることができます。

\( \displaystyle {}\textbf{Aが起きる確率} = \frac{\textbf{Aが起こる場合の数}}{\textbf{すべての場合の数}} \)

一般的には0から1の範囲で表され、0は事象が絶対に起こらないことを意味し、1は事象が確実に起こることを意味します。

例えば、コインを投げるときは、すべての場合の数が表裏の2通りで、表裏どちらか一方の面が上になります。よって表が出る確率は1/2(または0.5)となります。これは、表が出る可能性が裏が出る可能性と同じであることを示しています。

同様に、サイコロを投げるときは、すべての場合の数が1~6までの6通りで、1~6のどれか一つの目が出ます。よって例えば、特定の目(例えば1)が出る確率は1/6(約0.167)となります。これは、6つの目のうちどれか1つが出る可能性が同じであることを示しています。

確率は、リスク管理、ゲーム理論、統計学、機械学習など、多くの分野で応用されています。不確実性を扱う際に、確率は重要な概念となります。

確率の活用例

確率の概念は私たちの日常生活や業務の中で多様な形で利用されます。以下にいくつかの具体例を挙げます。

  1. 天気予報:天気予報は気象データを基に確率を計算し、ある日の天候を予測します。例えば、「明日の雨の確率は60%」という予報は、同じ気象条件下で100回繰り返した場合、約60回は雨が降ると予測しています。
  2. カジノゲーム:ポーカー、ブラックジャック、ルーレットなどのカジノゲームでは、確率がゲームの結果を大きく左右します。例えば、ルーレットでは各番号が出る確率は均等です(アメリカンスタイルでは38分の1、ヨーロピアンスタイルでは37分の1)。
  3. 保険:保険会社は、ある事象(事故、病気、死亡など)が発生する確率を計算し、それを基に保険料を設定します。
  4. 製造業:製造業では、製品の品質管理や製造ラインの効率化のために確率が使われます。例えば、ある部品が故障する確率を知ることで、保守スケジュールを計画したり、製品の寿命を予測したりします。

これらの例からわかるように、確率は未来の事象の予測やリスクの評価に役立つ強力なツールです。

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