プロジェクトマネジメント①

目次

プロジェクト

プロジェクトとは、特定の目的を達成するために一定期間にわたって行われる一連の作業や活動のことです。

プロジェクトには、明確な目標、期限、予算、資源などが設定され、その範囲内で目標達成を目指します。

プロジェクトマネジメント

プロジェクトマネジメントとは、プロジェクトの要求事項を満足させるために、知識、スキル、ツール、技法をプロジェクト活動に適用することを指します。

プロジェクトマネージャ

プロジェクトマネージャは、プロジェクト全体の計画、実行、監視、制御、終了に関する全ての活動を統括する責任者です。

プロジェクトマネージャは、目標達成のためにチームを組織し、リソースを配分し、リスクを管理します。さらに、プロジェクトの進捗状況を追跡し、問題が発生した際には適切な対応策を立てて実行します。

プロジェクトマネージャは、プロジェクトの成功を確実にするために、コミュニケーション能力、リーダーシップ、問題解決能力、意思決定能力、時間管理能力などが求められます。また、関係者との協力関係を築き、プロジェクトがスムーズに進行するように調整する役割も担います。

プロジェクトマネジメントの重要性

プロジェクトマネジメントが有効に機能しなかった場合、プロジェクトが以下のような事態に陥ってしまう可能性があります。

  1. 納期遅延: 予定されていた期日に目標を達成できず、結果として全体のスケジュールが遅れます。これにより、関連する他のタスクやプロジェクトにも影響が出る可能性があります。
  2. コスト増加: 設定された予算を超えてしまうことが考えられます。不要な作業や過度な変更、効率的でないリソースの利用などが主な原因となることが多いです。
  3. 品質の低下: 作業の品質が確保されず、不具合や欠陥が多くなる可能性があります。この結果、後での修正や改善が必要になることも多く、追加の時間やコストがかかることが考えられます。
  4. コミュニケーション不足: チーム内や関係者間での情報共有が不足すると、誤解や情報の齟齬が生じる可能性があります。これは、効率的な意思決定を阻害し、プロジェクトの進行を遅らせる原因となります。
  5. 変更管理の不備: 途中での変更要求が多発し、それに適切に対応できない場合、プロジェクトの目的やスコープが不明確になります。結果的に、完成した成果物が当初の期待や要件を満たさなくなることが考えられます。
  6. リソースの無駄: 必要な人材や物資、時間などのリソースが過剰または不足してしまい、効率的な活用ができないことが考えられます。
  7. ステークホルダーとのトラブル: ステークホルダーの要望や期待に応えられない場合、信頼を失うリスクが高まります。これにより、将来的なビジネスチャンスを逸する可能性も考えられます。
  8. モチベーションの低下: チームメンバー間での役割や責任が不明確であったり、適切なフィードバックや評価がなされないと、メンバーのモチベーションが低下します。これは生産性の低下や離職の原因となることがあります。
  9. リスク管理の不備: 予見されるリスクへの対策や緊急時の対応計画が不十分であると、予期しないトラブルが発生した際に迅速かつ適切に対応することが困難になります。
  10. ドキュメンテーションの不足: プロジェクトの進行や結果に関する情報が不足していると、後のフェーズや次回のプロジェクトでの参照や再利用が難しくなります。

これらの問題点は、プロジェクトの規模や内容、関与するステークホルダーなどの状況によって異なる影響を及ぼすことが考えられます。適切なプロジェクトマネジメントを行うことで、これらのリスクを最小限に抑えることができます。

プロジェクトの立ち上げから終了まで

プロジェクト立ち上げから終了までの流れでは、まずプロジェクト憲章を作成します。これはプロジェクトの目的、目標、範囲、関係者や役割、制約事項などを明確にするための文書です。

プロジェクト憲章が承認された後、プロジェクトマネジメント計画書を作成します。これはプロジェクトの進行に関する計画や手法を記載した文書で、スケジュールやリソース、リスク管理、コミュニケーション計画などが含まれます。

プロジェクトマネジメント計画書の詳細

プロジェクトマネジメント計画書は、プロジェクトの全体像を明確にし、目的、範囲、期間、チーム構成、リソースなどの詳細を記述する文書です。

プロジェクトの開始時に、プロジェクトマネージャが主導して作成します。計画書は、プロジェクトメンバーやステークホルダーに対して、プロジェクトの進め方や方向性を明確に伝える役割を果たします。

プロジェクト進行中に状況が変化した場合、プロジェクトマネージャは計画書を更新して対応します。更新は、変更内容が明確で、理由と影響を評価した上で行われるべきです。

計画書は、プロジェクトの成功に向けた道筋を示す重要なツールであり、効率的かつ効果的なプロジェクト進行をサポートします。プロジェクト終了時には、成果物の品質や納期などを評価する基準としても活用されます。

PMBOKピンボック

PMBOK(Project Management Body of Knowledge)は、プロジェクトマネジメントのベストプラクティスや知識体系をまとめたガイドブックです。

PMBOKは、米国のプロジェクトマネジメント協会(PMI:英語版日本語版)が策定・管理しています。プロジェクトマネジメントの専門家たちが経験や知識を共有し、絶えずアップデートされています。

以下は、PMBOKの主な特徴と内容について簡潔に説明します。

  1. 知識エリア: PMBOKは、プロジェクトマネジメントの10の主要な知識エリアに焦点を当てています。これには、統合、スコープ、スケジュール、コスト、品質、資源、コミュニケーション、リスク、調達、ステークホルダが含まれます。(後述)
  2. プロセスグループ: これらの知識エリアは、5つのプロセスグループ(立上げ、計画、実行、監視・コントロール、終結)にまたがって展開されます。
  3. ベストプラクティス: PMBOKは、プロジェクトマネジメントのベストプラクティス、ツール、技術を紹介し、それらをどのように使用するかのガイダンスを提供します。
  4. 共通の言語: PMBOKは、プロジェクトマネジメントのプロフェッショナルたちが共通の言語とフレームワークでコミュニケーションを取るのを助けるための基準として使用されます。
  5. PMP試験: PMIが認定するPMP(Project Management Professional)資格の試験は、PMBOKに基づいています。

要するに、PMBOKは、プロジェクトマネジメントの国際的なスタンダードとして広く認識されているガイドであり、この分野の専門家やプロフェッショナルが日常的に参照する主要な資料の一つです。

ベストプラクティスとは?

「ベストプラクティス」とは、特定の業務やプロセスを効率的に、効果的に遂行するための最も適切な方法や手法を指す言葉です。ベストプラクティスは経験や試行錯誤を通して確立されたものであり、一般的に業界や分野の標準として認識されている実践的な方法を指します。

具体的な例え話で説明します。

想像してみてください。あなたは新しいパン屋さんを開店しようと考えています。しかし、パン屋の経験はほとんどありません。そこで、成功している他のパン屋の経営者にアドバイスを求めることにしました。

その経営者から、次のようなアドバイスを受けました。

  1. 朝の開店前に新鮮なパンをたくさん焼くこと。
  2. 人気の商品は目立つ場所に陳列すること。
  3. 定期的に新商品を試み、顧客の反応を確かめること。

これらのアドバイスは、他の多くのパン屋でも実践されていて、効果的であることが実証されている方法です。

このような、業界内で実績があり、多くの人々にとって効果的であることが確認された方法や手法を「ベストプラクティス」と呼びます。

プロジェクトマネジメントの進め方

プロジェクトマネジメントの5つのプロセスグループは、プロジェクトの立上げから終結に至るライフサイクル全体での活動を整理し管理するための枠組みです。

これらのプロセスグループは、PDCAサイクル(Plan-Do-Check-Act)とも密接に関連しています。以下に、5つのプロセスグループとその関連性を説明します。

  1. 立上げ
    • プロジェクトの目的や正当性を明確にし、プロジェクトを正式に開始します。
    • 関連するPDCAのフェーズ: この段階は、PDCAの「Plan」の初期段階に該当します。
  2. 計画
    • プロジェクトの全体的な方針やアプローチ、タスクの詳細、スケジュール、予算などを計画します。
    • 関連するPDCAのフェーズ: 「Plan」の段階に該当します。
  3. 実行
    • 計画に基づき、具体的なタスクや作業を実行します。
    • 関連するPDCAのフェーズ: 「Do」の段階に該当します。
  4. 監視・コントロール
    • プロジェクトの品質、進捗、コストを監視し、計画とのギャップや偏差を特定して修正措置を行います。
    • 関連するPDCAのフェーズ: 「Check」の段階に該当し、必要に応じて「Act」の修正措置も含まれます。
  5. 終結
    • プロジェクトを終了し、全体を振り返って学びを得ることや、成果物を顧客やステークホルダーに引き渡します。
    • 関連するPDCAのフェーズ: この段階は、PDCAの「Act」の反省や次のサイクルへのフィードバックの部分に該当します。

これら5つのプロセスグループを通じて、プロジェクトはシステマティックに進行し、リスクを最小化し、期待される成果を効果的に達成することができます。

PDCAのサイクルは、これらのプロセスグループの中で繰り返され、プロジェクトの改善と最適化に寄与します。

プロジェクトマネジメントの知識エリア

PMBOKは、プロジェクトマネジメントの10の主要な知識エリアに焦点を当てています。

以下に、主要なものについて説明します。

プロジェクトスコープマネジメント

プロジェクトスコープマネジメントは、プロジェクトの範囲や成果物を明確に定義し、その範囲内で作業が進行するよう管理するプロセスです。

これには、プロジェクトの目的の明確化、必要な作業の特定、成果物の定義、プロジェクトからの除外事項の明確化、そしてスコープ変更の管理などが含まれます。

このプロセスが適切に行われることで、プロジェクトが予定通りに進行し、期待される結果を達成できる確率が高まります。

プロジェクトコミュニケーションマネジメント

プロジェクトコミュニケーションマネジメントは、プロジェクトの情報が適切に作成、共有、理解、保存されるようにするプロセスです。

これは、プロジェクトチーム間のコミュニケーションだけでなく、プロジェクトのステークホルダー全体とのコミュニケーションも含みます。

明確で効果的なコミュニケーションがなされることで、誤解や混乱が減り、プロジェクトの成功率が向上します。

プロジェクトリスクマネジメント

プロジェクトリスクマネジメントは、プロジェクトに影響を及ぼす可能性のある不確実な事象(リスク)を識別、評価、そして管理するプロセスです。

リスクの評価には、そのリスクが現実になった場合の影響の大きさと、そのリスクが発生する確率の評価が含まれます。

そして、リスクに対する対策の策定とその実行、そしてリスクの状況の継続的な監視と評価が行われます。

このプロセスが適切に行われることで、プロジェクトが計画通りに進行し、目標を達成できる可能性が高まります。

プロジェクトコストマネジメント

プロジェクトコストマネジメントは、プロジェクトの予算作成、コストの見積もり、予算の配分、そしてコストの監視と制御を含むプロセスです。

予算超過を防ぎ、効率的な資源使用を確保するためには、これらの活動が適切に行われることが重要です。

プロジェクトスケジュールマネジメント

プロジェクトスケジュールマネジメントは、プロジェクトのスケジュールを作成、監視、制御するプロセスです。

これには、タスクの所要時間の見積もり、依存関係の特定、そしてスケジュールの作成と調整が含まれます。

このプロセスが適切に行われることで、プロジェクトが計画通りに進行し、期日に結果を達成する可能性が高まります。

プロジェクト資源マネジメント

プロジェクト資源マネジメントは、プロジェクトに必要な資源(人的資源、物的資源、財務資源など)の計画、獲得、配分、そして管理を行うプロセスです。

これには、必要なスキルと人員の特定、資源の配分とスケジューリング、そして資源使用の監視と調整が含まれます。

これらの活動が適切に行われることで、プロジェクトが計画通りに進行し、効率的に資源を使用することが可能になります。

プロジェクト品質マネジメント

プロジェクト品質マネジメントは、プロジェクトが定めた品質基準を達成し、ステークホルダーの期待に応えるプロセスです。

品質計画(品質目標の定義と品質指標の設定)、品質保証(品質プロセスが適切に実行されていることの確認)、品質管理(品質メトリクスのモニタリングと改善)の3つの主要な部分から成ります。

プロジェクト調達マネジメント

プロジェクト調達マネジメントは、プロジェクトに必要な商品やサービスを外部から確保するためのプロセスです。これには、調達の計画、供給者の選定、契約の締結、そして調達品の管理が含まれます。

具体的には、プロジェクトに必要な製品やサービスを特定し、適切なベンダーやサプライヤーを選定します。次に、契約交渉と締結を行い、購入した製品やサービスがプロジェクトの要件を満たすことを確認します。

このプロセスを通じて、プロジェクトは外部リソースを効果的に利用し、コストと品質のバランスを取りながら目標を達成できるようになります。また、リスク(供給の遅延、コストの超過、契約の不履行、品質の問題など)の管理と問題解決のための戦略も重要な役割を果たします。

プロジェクト統合マネジメント

プロジェクト統合マネジメントは、プロジェクトのすべての要素(スコープ、スケジュール、コスト、品質、リスクなど)を統合的に調整・管理するプロセスです。

これには、プロジェクト憲章の作成、プロジェクトマネジメント計画書の作成と管理、プロジェクト実行の監視、変更の管理、プロジェクトの終結、組織の資産への知識・教訓の登録などを含みます。

プロジェクトマネージャーは、全体の視点からプロジェクトを見て、プロジェクトのすべての部分が連携して動作していることを確認します。

関連用語

プラスのリスク・マイナスのリスク

プロジェクトにおけるリスクは、プラスのリスク(機会)とマイナスのリスク(脅威)の2つに分類されます。

プラスのリスク(機会)は、プロジェクトにポジティブな影響を与える予期しない出来事や状況のことです。これらは、プロジェクトの目標達成を促進し、コスト削減やスケジュールの短縮、品質向上などに寄与する可能性があります。

プロジェクトマネージャーは、プラスのリスクを積極的に捉え、活用することでプロジェクトの成功率を向上させることが求められます。

一方、マイナスのリスク(脅威)は、プロジェクトにネガティブな影響を与える予期しない出来事や状況のことで、プロジェクトの目標達成を阻害する要因となります。コストオーバー、スケジュール遅延、品質低下などが典型的なマイナスのリスクです。

プロジェクトマネージャーは、マイナスのリスクを特定し、適切な対策やリスク軽減策を実施することが重要です。

仕様変更

ソフトウェア開発における仕様変更とは、ソフトウェアの開発や保守の過程で、要件や設計などの仕様に変更が生じることを指します。

仕様変更は、さまざまな要因で発生することがあります。例えば、ビジネス要件の変化、技術的な制約や新たな技術の採用、利用者の要求やフィードバックの反映などです。

仕様変更が起きると、変更に関連する作業やリソースの見積もりが変わり、スケジュールや予算、品質などの影響を受けます。

仕様変更は、ソフトウェア開発プロジェクトにおいて避けがたいものですが、適切に管理されない場合、仕様変更はプロジェクトの遅延や予算超過、品質低下などの原因となることがあります。

したがって、プロジェクトマネージャは仕様変更の影響を評価し、プロジェクト計画を適宜変更する必要があります。

プロジェクトマネジメントオフィス

プロジェクトマネジメントオフィス(PMO:Project Management Office)は、企業内で複数のプロジェクトを横断的にサポートする部門です。PMOの主な役割は以下の通りです。

  1. 標準化:プロジェクト管理の方法や手順を統一し、ガイドラインを提供します。
  2. 監視:全プロジェクトの進捗をチェックし、問題が発生した場合にサポートします。
  3. リソース管理:人材や予算などのリソースを効率的に配分し、複数のプロジェクト間での調整を行います。
  4. 知識共有:過去のプロジェクトから得られた知識や教訓を集めて共有します。
  5. 戦略的調整:全プロジェクトを企業の目標に合わせて調整します。

つまり、PMOは企業の複数のプロジェクトが円滑に進行し、全体的な目標達成をサポートする重要な部門です。

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