経営戦略① 全社戦略

目次

経営戦略

経営戦略は、企業が競争優位を築き、目標を達成するための総合的な計画や取り組みです。

経営戦略は主に全社戦略、事業戦略、機能別戦略の3つのカテゴリーに分類されます。

※参考:経営戦略と経営理念の関係

全社戦略

全社戦略は、企業全体の目標や方向性を定める戦略で、企業の基本的な価値観やビジョン、ミッションを明確にし、組織全体のリソースの配分や事業ポートフォリオの最適化を決定します。

全社戦略は、企業の長期的な成長や競争力の向上を目指して策定されます。

コアコンピタンス

コアコンピタンスとは、顧客に価値をもたらし、企業にとって競争優位の源泉となる、競合他社には模倣されにくいスキルや技術のことです。

これは、企業の競争優位性を維持し、持続的な成長を支える基盤となります。

コアコンピタンスは、業界内で独自の地位を確立し、市場でのリーダーシップを獲得するために重要です。

コアコンピタンス(core competence)は「core:中心部、中核部」と「competence:能力、力量、適性」を組み合わせた言葉です。

ベンチマーキング

ベンチマーキング(英:benchmarking)は、自社のサービスやプロセスを業界内外の優れた企業やその最良の実践(ベストプラクティス)と比較し、改善点を見つけ出すことを目的とした経営手法です。

ベンチマーキングを通じて、企業は自社の弱点や効率性の低いプロセスを特定し、改善策を策定・実行することで、競争力を向上させることができます。

※ベストプラクティスとは、業界内で最も効果的であると認められた方法やプロセスを指し、ベンチマーキングの基準として用いられます。

「ベンチマーク(benchmark)」という言葉は、測量で使われる基準点に由来します。

M&Aエム&エー

M&A(Mergers and Acquisitions)とは、企業の合併(Merger)や買収(Acquisition)を指します。

企業が他の企業と合併したり、他の企業を買収することで、業務拡大や市場シェアの獲得、効率化、リスク分散などの目的を達成することができます。

M&Aは、主に垂直統合と水平統合の2つの形態に分類されます。

垂直統合

垂直統合(Vertical Integration)は、企業が自社の供給チェーン(生産から販売までの一連の流れ)の上流や下流にある企業と合併・買収することです。

例えば、自動車メーカーが部品メーカーやディーラーを買収することなどが含まれます。

垂直統合によって、企業はコスト削減や品質管理の強化、供給安定化などの効果を期待できます。

水平統合

水平統合(Horizontal Integration)は、同じ業界や同じ市場で競争している企業同士が合併・買収することです。

例えば、スマートフォンメーカーが別のスマートフォンメーカーを買収することなどが該当します。

水平統合によって、企業は市場シェアの拡大、競争相手の減少、規模の経済を享受することができます。

企業買収の手法

企業の所有権や経営権の移転を目的として行われる買収の手法には以下のような種類があります。

TOBTOB(Take Over Bid)は、株式公開買付けのことを指します。
買収を希望する企業(買い手)が、対象企業の株主に対して一定期間、所定の価格で株式を買い付けることを公表し、株主がこれに応じるかどうかを選択できる方式です。
これによって、買い手は対象企業の株式の過半数以上を取得し、経営権を握ることができます。
MBOMBO(Management Buyout)は、経営陣による買収のことを指します。
経営陣が自社の株式を買い取り、経営権を取得することで、自社の経営に対する権限や責任をより強化し、事業活動をより自由に行えるようになります。
これにより、企業の事業方針や経営効率を改善し、競争力を向上させることが目的です。
EBOEBO(Employee Buyout)は、従業員による買収のことを指します。
一般従業員が自社の株式を買い取り、経営権を握ることで、従業員の経営参加やモチベーション向上を図ります。
これによって、企業の業績向上や、従業員の福利厚生の改善が期待されます。

アライアンス(企業提携)

アライアンス(企業提携)は、それぞれの企業が保有する経営資源を補完することを目的とした、企業間での事業の連携、提携や協調行動を指します。

異なる企業が独自性を維持しながら相互に利益を追求するために、技術やノウハウ、リソースを共有し、技術提携・生産や販売の委託・合弁会社の設立などによって協力して事業を展開します。

アライアンスは、短期間で競争力を向上させるために、新市場への参入や技術開発を効率的に行うことができます。

アライアンスの例

日本の自動車メーカーであるトヨタとドイツのBMWは、環境技術や燃料電池車の開発においてアライアンスを結んでいます。

これにより、双方の技術力やリソースを活用して、効率的に新技術の開発を進めることができます。

OEM(Original Equipment Manufacturer)

OEMは、あるメーカーが他社ブランドの製品を製造することを指します。

OEMは、コスト削減やリソースの効率的な活用、市場へのスピーディな参入などのメリットがあります。

OEMの例

Appleは、自社製品であるiPhoneやiPadの部品を韓国のサムスンや台湾のフォックスコンなどの企業にOEM製造させています。

これにより、Appleは製造コストを抑えつつ、高品質な製品を供給することができます。

ジョイントベンチャ

ジョイントベンチャは、2つ以上の企業が共同で新しい企業を設立し、共同で事業を展開することを指します。

ジョイントベンチャは、リスクの分散、技術や資源の共有、新市場への参入などの目的で行われます。

ジョイントベンチャの例

かつて携帯電話業界でジョイントベンチャーを組んでいたソニーとエリクソンは、ソニーの映像技術とエリクソンの通信技術を組み合わせ、世界的に人気のあった「ソニー・エリクソン」ブランドの携帯電話を開発していました。

ベンチャーキャピタル

ベンチャーキャピタルは、新興企業や成長期の企業への投資を行う専門の投資会社です。

投資先企業の資金調達や経営支援を行い、企業の成長や成功を後押しします。

ベンチャーキャピタルは、投資先企業が大きく成長した際に、株式の売却や公開(IPO)を通じてリターンを得ることを目指します。

ベンチャーキャピタルの例

シリコンバレーのセコイア・キャピタル(Sequoia Capital)は、AppleやGoogle、Instagramなどの有望なスタートアップ企業に投資を行ってきたベンチャーキャピタルです。

セコイア・キャピタルは、投資先企業の成長を支援し、大きなリターンを得ることで名声を確立しています。

CVC(Corporate Venture Capital)

CVCは、大企業が設立したベンチャーキャピタルのことを指します。

CVCは、大企業の資金やネットワークを活用して、新興企業への投資を行い、技術革新や市場開拓を促進します。

また、投資先企業から新たな技術やビジネスモデルを取り入れることで、自社の競争力を向上させることが目的です。

CVCの例

Googleの親会社であるアルファベットは、自社のCVCであるGV(Google Ventures)を設立しています。

GVは、人工知能やヘルスケア、エネルギーなどの分野で革新的な技術を持つスタートアップ企業に投資を行っています。

アウトソーシング

アウトソーシング

アウトソーシングは、企業が自社で行っていた業務の一部を、専門性やコスト削減を理由に外部の業者に委託することです。

アウトソーシングは、コア業務に集中することができるため、企業の効率化や生産性向上に寄与します。

一般的なアウトソーシングの例としては、コールセンターやシステム開発、製造業務などがあります。

アウトソーシングの例
  1. ITサポート業務を専門のIT企業に委託する。
  2. 企業の経理業務を会計事務所に外部委託する。
  3. 配送業務を物流会社に委託する。
  4. 人事・採用業務を人材紹介会社に委託する。
BPO

BPO(Business Process Outsourcing:ビジネスプロセスアウトソーシング)は、企業が自社の業務プロセスの一部または全部を、専門性を持った外部の企業(アウトソーシング先)に委託することです。

BPOの目的には、コスト削減や効率化、専門知識の活用などがあります。

例えば、コールセンターや経理業務を外部の専門企業に委託することで、自社のリソースをより重要な業務に集中させることができます。

オフショアアウトソーシング

オフショアアウトソーシングは、アウトソーシングの一形態で、企業が自国ではなく海外の業者に業務を委託することです。

オフショアアウトソーシングの目的は、人件費や生産コストの削減、海外市場へのアクセス向上、専門知識や技術力の活用などが挙げられます。

例としては、ソフトウェア開発や製造業務をアジアや東欧の企業に委託するケースが一般的です。

「オフショア:offshore」とは、「離れた」という意味の「off」と「海岸」を意味する「shore」が組み合わさってできた言葉で、「海外の」「沖合の」という意味があります。

オフショアアウトソーシングの例
  1. ソフトウェア開発をインドのIT企業に委託する。
  2. データ入力業務をフィリピンのBPO企業に委託する。
  3. 製造業務を中国の工場に委託する。
  4. カスタマーサポート業務を東南アジアのコールセンターに委託する。

ファブレス

ファブレスとは、主に半導体業界などの製造業で用いられる用語で、自社での工場(ファブ)を持たず、設計だけを行って製造は外部の企業に委託する企業のことを指します。

ファブレス企業は、製造設備への投資コストを抑え、設計や技術開発に集中することができます。また、市場の変化に素早く対応し、競争力を維持することが可能です。

「ファブレス:fabless」とは、「fabrication facility less」を略した言葉で、「工場(fabrication facility)を持たない(less)」という意味です。

ファブレスの例
  1. 任天堂がゲームコンソールの製造をフォックスコン(台湾の電子機器製造企業)に委託する。
  2. NVIDIAが半導体の製造をTSMC(台湾の半導体製造会社)に委託する。
  3. AmazonがKindleの製造をQuanta Computer(台湾の電子機器製造企業)に委託する。
  4. MicrosoftがSurfaceシリーズの製造をペガトロン(台湾の電子機器製造企業)に委託する。
  5. QualcommがSnapdragonプロセッサの製造をサムスン(韓国の電子機器製造企業)に委託する。

関連用語

IPO

IPO(Initial Public Offering)とは、企業が初めて一般の投資家に対して株式を公開し、株式市場に上場することを指します。

これにより、企業は公開市場から資金を調達することができ、資本を拡大し、成長の機会を広げることが可能になります。

IPOのプロセスには、内部管理体制の整備、証券会社との契約、証券取引所への申請、公募価格の決定などが含まれます。

IPOは企業にとって重要なステップであり、資金調達、企業の可視性向上、株式の流動性の確保などの利点がありますが、同時に市場の変動リスクや厳しい規制への対応が必要になります。

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