情報システム戦略
情報システム戦略は、経営戦略に基づいて情報システムを構築・運用・改善するための戦略です。
CEO(Chief Executive Officer:最高経営責任者)が経営戦略を策定し、CIO(Chief Information Officer:最高情報責任者)が情報システム戦略を経営戦略に適合させる役割を担います。
経営戦略と情報システム戦略は密接に連携し、情報システムが経営戦略の実現を支援するように取り組むことが重要です。
EA
EA(Enterprise Architecture:エンタープライズアーキテクチャ)は、現状の業務と情報システムの全体像を可視化し、将来のあるべき姿を設定して、全体最適化を行うためのフレームワークです。
EAでは、現状の業務と情報システムの構成を「ビジネス」「データ」「アプリケーション」及び「技術」の四つの階層において把握したAs-Isモデルと、将来のビジョンに基づいた理想的な構成を示すTo-Beモデルを作成します。
その後、As-IsモデルとTo-Beモデルの差分を特定し、ギャップ分析を行うことで、組織がどのように進化すべきかを明確にし、必要な改善を計画・実行することが可能になります。
ギャップ分析は、組織の現状の状態(As-Isモデル)と達成したい目標状態(To-Beモデル)の間の差異を特定し、そのギャップを埋めるために必要な措置を明確にする分析手法です。
EAは組織の持続的な成長を支援し、変化への適応力を高める役割を果たします。
EA(エンタープライズアーキテクチャ)を理解するための例え話をしてみましょう。
ある国の王様が、自分の王国を発展させるために、国内の交通インフラを整備しようと決めました。しかし、この国は山や川が多く、どのように整備していくべきか悩んでいました。そこで、エンタープライズアーキテクト(国土計画の専門家)に相談することにしました。
まず、エンタープライズアーキテクトは国の現状の交通インフラ(As-Isモデル)を調査し、将来の発展や国民のニーズに応じた理想的な交通インフラ(To-Beモデル)を提案しました。その後、現状の交通インフラと理想的なインフラの違いを特定し、ギャップ分析を行いました。
ギャップ分析の結果をもとに、エンタープライズアーキテクトは王様と一緒に交通インフラの改善計画を立て、国土の整備を進めました。このように、エンタープライズアーキテクチャは、組織全体を俯瞰し、現状と将来のビジョンを統合して、効率的で持続可能なシステムを構築するための枠組みとなります。
情報システムの種類
情報システムはSoRとSoEに大別できます。
2つのシステムは、それぞれ異なる目的と機能を持っていますが、連携して効果的なビジネスプロセスを実現することが重要です。
SoR
SoR(System of Record)とは、企業や組織が重要なデータを一元的に管理するための情報システムのことを指します。具体的には、顧客データ、取引履歴、契約内容などの基本的な情報が含まれます。
このシステムの特徴は、データの正確性と信頼性にあり、すべての情報は一貫性を持ち、誤った情報や重複した情報が存在しないように管理されます。そのため、SoRは事実上、企業の「真実の情報源」として機能します。
このシステムから取得した情報は、ビジネスの意思決定を行うための重要な根拠となります。例えば、販売データを分析して商品の需要を予測したり、顧客の購買履歴を分析してマーケティング戦略を立案したりする際に活用されます。
ただし、SoRが全ての情報を網羅しているわけではなく、専門的な分析や高度な予測を行うためには、他のデータソースやツール(例えばデータウェアハウスやビッグデータ解析ツールなど)を併用することが一般的です。
SoE
SoE(System of Engagement)とは、ユーザーや顧客とのつながり(Engagement:エンゲージメント)を促進するための情報システムのことを指します。これは個々のユーザーが情報に容易にアクセスし、共有し、そして行動することを助けます。
SoEの主な目的は、企業と顧客、あるいは企業内の社員同士のエンゲージメントを強化し、その結果としてビジネスの効率性と成果を向上させることです。
そのため、この種のシステムは、使いやすいユーザーインタフェース、リアルタイムのコラボレーションツール、モバイルデバイスへの対応など、ユーザーの参加と協力を促す機能を備えています。
具体的な例としては、顧客関係管理(CRM)システムや、チーム協同作業ツール(グループウェアなど)、プロジェクト管理ツール、電子メール、SNSなどがあります。これらは、ユーザーとの対話を強化し、情報共有を容易にし、より良い決定を下すことを助けます。
SoRが企業の「記録」を一元管理するのに対して、SoEはそれらのデータを「活用」するためのツールと言えます。
これらは組織のビジネス戦略やデジタルトランスフォーメーションを進める上で、互いに補完しながら機能します。