その他の法律・ガイドライン・情報倫理

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コンプライアンス

コンプライアンス(compliance)は、日本語では「法令遵守」と訳され、企業が法律や規則、社会的な規範を遵守することを意味します。

コンプライアンスは、企業が法律に適合し、公正な活動を行うための基盤となる重要な要素です。これは企業の社会的責任の一部でもあります。

企業がコンプライアンスを確保するためには、内部のルール作りや教育、監視体制の整備が必要です。コンプライアンス違反が発覚すると、企業の評価は下がり、罰金や訴訟などの法的なリスクにも直面します。

コンプライアンスの具体例

コンプライアンスとは、企業が法令、規則、内部規定等を遵守することを意味します。以下に具体例をいくつか挙げます。

  1. 法令遵守:企業は、その事業に関連するすべての法律を遵守しなければなりません。たとえば、労働法(労働時間、休暇、最低賃金など)、税法(正確な税金の申告と支払い)、環境法(排出規制の遵守、廃棄物処理の規定など)等があります。
  2. 倫理規定の遵守:企業は、公正なビジネスの実施を確保するために、内部の倫理規定を設けることがあります。たとえば、贈賄や利益相反の防止、情報の適切な管理などがあります。
  3. データ保護とプライバシー:個人情報保護法やGDPR(EUの一般データ保護規則)のような法律は、企業が顧客や従業員のデータをどのように取り扱うべきかを規定しています。これらの法令を遵守することは、重要なコンプライアンスの一部です。
  4. セキュリティ規定の遵守:企業は情報セキュリティポリシーを設け、それを遵守することを要求します。たとえば、パスワードの管理、セキュリティアップデートの適用、機密情報の適切な取り扱いなどが含まれます。
  5. 内部統制:企業は、金融報告の正確性と企業資源の適切な管理を確保するために内部統制を設けます。これには、適切な調達プロセス、資産管理、リスク管理などが含まれます。
  6. 公正な競争:企業は反トラスト法(競争法)を遵守する必要があります。これには、価格の結託、市場の独占、不適切な競争制限行為などが含まれます。
  7. 社内報告制度の遵守:企業は、不正行為が発覚した場合にそれを報告する社内報告制度を設けています。従業員はこの制度を通じて不正行為を報告し、企業はその情報を元に対策を講じます。
  8. 健康と安全:企業は労働安全衛生法等の法律や規則を遵守し、従業員の健康と安全を確保する必要があります。これには、適切な労働環境の提供、危険な作業に対する適切な訓練と保護措置、事故の報告と調査などが含まれます。
  9. 金融規制の遵守:特に金融業界では、金融商品取引法や金融サービス業法等の遵守が求められます。不適切な取引の防止や、顧客からの資金の適切な管理などが重要です。
  10. 環境保護:企業は、環境法規や企業が定めた環境基準を遵守する必要があります。これには、排出量の管理、廃棄物の適切な処理、再利用とリサイクルの促進などが含まれます。
  11. 人権の尊重:企業は、従業員や顧客、サプライチェーン内の人々の人権を尊重することが求められます。これには、児童労働や強制労働の排除、差別やハラスメントの防止、適切な労働条件の提供などが含まれます。

これらは一部の例ですが、各企業の業種、規模、国や地域によって、その他にも遵守すべき法令や規則が存在します。それら全てを遵守することが、真にコンプライアンスを実現すると言えます。

過去問チェック

過去に試験で取り上げられたことのあるコンプライアンス違反の例には以下のようなものがあります。

  1. 交通ルールの遵守: 企業におけるコンプライアンス遵守とは、従業員が公道を使用する際の安全運転や交通ルールの順守も含みます。違反を犯すことで罰金や点数の減点によるペナルティだけでなく、企業の信頼性や評価にも影響を及ぼす可能性があります。
  2. 公務員接待の禁止: 公務員や公職にある人々への接待や贈賄は法律で禁止されています。これに違反すると刑事罰が科されるだけでなく、企業の評価が大きく落ち、ビジネスに大きな影響を及ぼす可能性があります。
  3. 自社の就業規則の遵守: 企業は従業員に対して就業規則を定め、それを遵守することを求めます。これには出勤時間、休憩時間、休日、残業、セクシャルハラスメントやパワハラ防止などが含まれます。就業規則を遵守することで、従業員全員が公正かつ公平に扱われ、適切な労働環境が保たれます。
  4. 他者の知的財産権の尊重: 他者の特許、商標、著作権などの知的財産権を尊重することも重要なコンプライアンス遵守の一部です。他者の知的財産を無許可で使用したり、模倣したりすると、法的なトラブルに発展する可能性があります。また、他者の知的財産権を尊重することで、企業の信頼性と誠実さも評価されます。
  5. 広告表示の義務違反: 企業が商品を好意的に評価する記事を掲載する場合、それが広告であることを明確に示す必要があります。この義務を怠ると、消費者を誤認させることになり、広告法規に反する行為となります。特にステルスマーケティングは、消費者の信頼を損ねることにも繋がるため、重大なコンプライアンス違反となり得ます。
  6. 原産地表示の誤認: 商品の原産国を誤認させるような表示は、消費者に対して誤った情報を提供することになり、景品表示法や不正競争防止法に違反する可能性があります。消費者が商品の選択に際して重要な判断基準とする原産国情報を正確に提供することは、透明性のある取引を実現する上で重要です。

情報倫理

プロバイダ責任制限法

プロバイダ責任制限法は、インターネット上の情報流通(掲示板やSNSの投稿など)により、誰かの権利が侵害された場合について、その情報を提供・管理しているインターネットサービスプロバイダ(ISP)やサーバ管理者(プロバイダ等)の責任を限定しつつ、被害者の権利を保護するための法律です。

概要は以下の通りです。

  1. プロバイダ等の損害賠償責任の制限:この法律により、プロバイダ等は、ユーザが他人の権利を侵害した情報を投稿した場合でも、特定の条件下で損害賠償責任から免除されます。これは、プロバイダ等が全ての投稿を監視・管理することは現実的に不可能であることを考慮した結果です。
  2. 発信者情報の開示請求:もしユーザが他人の権利を侵害する投稿を行った場合、被害者はプロバイダ等に対して、その投稿を行ったユーザ(発信者)の情報の開示を求めることができます。プロバイダ等は、開示請求を受けた際には発信者にその旨を通知し、開示するかどうかについて発信者の意見を聴取することが求められます。
  3. 発信者情報開示命令に関する裁判手続:発信者への聴取の結果を踏まえ、プロバイダ等が開示請求を拒否した場合、被害者は裁判所に発信者情報の開示を命じるよう求めることができます。この法律は、その手続きを明確に定めています。

以上のように、この法律はインターネット上の情報流通とそれに伴う権利侵害問題に対して、公平なバランスを保つためのものです。

なぜプロバイダ責任制限法が必要なのか?

インターネット上に他人の権利を侵害する情報が流通した場合、プロバイダ等は、以下のように権利を侵害されたとする者、または発信者の両方から法的責任を問われるおそれがあります。

例えば、インターネット掲示板に『A社の社長が社員に対してパワハラを行っている』との書き込みがあった場合を考えます。

パターン①:書き込みを放置した場合
書き込みが虚偽であった場合、プロバイダ等はA社社長から「書き込みが放置され、権利を侵害された」として損害賠償請求を受ける可能性があります。

パターン②:書き込みを削除した場合
書き込みが虚偽ではなかった場合、プロバイダ等は「表現の自由」を侵害されたとして発信者から損害賠償請求を受ける可能性があります。

このようなケースにおいて、プロバイダ等が全ての投稿を監視・管理することは現実的に不可能であることを考慮した結果「プロバイダ責任制限法」が成立しました。

プロバイダ責任制限法により、プロバイダ等は以下の条件下で損害賠償責任から免除されます。

パターン①:書き込みを放置した場合
①権利が侵害されているのを知っていたとき、又は、②これを知りえたと認めるに足る相当の理由があるとき以外は、削除しなくても免責になります。

パターン②:書き込みを削除した場合
①権利が不当に侵害されていると信じるに足る相当の理由があるとき、又は②発信者に削除に同意するか照会したが7日以内に反論がない場合には、削除しても免責になります。

参考:総務省「プロバイダ責任制限法第3条の概要

ソーシャルメディアポリシー

ソーシャルメディアポリシーとは、企業や組織が設定する、ソーシャルメディアの使用に関する規則や指針のことです。

このポリシーは、企業が公式に情報を発信する際と、従業員が個人としてソーシャルメディアを使用する際の行動基準を定めます。主な目的は以下の通りです。

  • 企業がソーシャルメディアを使用する際の心得やルールなどを取り決めて、社外の人々が理解できるようにするため
  • 企業に属する役員や従業員が、公私限らずにソーシャルメディアを使用する際のルールを示すため

ソーシャルメディアポリシーによって、企業は効果的で責任あるソーシャルメディアの使用を促し、企業の信頼性と尊厳を保つことができます。

ソーシャルメディア

ソーシャルメディアは、ユーザーがコンテンツを作成、共有、交流することを可能にするデジタルツールやプラットフォームを指します。

このカテゴリには、ブログ、フォーラム、ビジネスネットワーク、写真や動画を共有するプラットフォームなど、多岐にわたる形態が含まれます。

ソーシャルメディアは情報の拡散を促進し、個人の表現の場を提供すると同時に、企業が広告やマーケティングを行う手段としても利用されます。

SNS

SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)は、オンライン上でのコミュニティを形成し、ユーザーが友人や家族とつながることを目的としたプラットフォームです。

FacebookやTwitter、Instagramなどが代表例です。

これらのサービスは、ユーザーがプロフィールを作成し、他のユーザーとの直接的な交流やコンテンツの共有、コメントなどのインタラクションを行うことを中心に設計されています。

コーポレートガバナンス

コーポレートガバナンス(Corporate Governance)は、企業経営が適切・健全に行われているかを、株主などの利害関係者が監督・監視する仕組みのことで、「企業統治」とも訳されます。

この考え方は、「会社は経営者のものではなく、資本を投下している株主のものである」という視点に基づいています。したがって、企業は経営の監視メカニズムを持ち、株主の利益を最大化することが求められます。これにより、企業価値の向上と株主への最大の利益還元が促されます。

具体的な取り組みとしては、取締役(経営の方向性を決定する役員)と執行役(日々の運営を行う役員)の役割を明確に分離することや、社外からの視点を持つ社外取締役を設置すること、社内のルールやガイドラインを明確化することなど、組織全体の透明性と公正さを確保するためのさまざまな取り組みを含みます。

また、コーポレートガバナンスは、会社と株主との関係、そして企業の適切な経営監視が維持されている状態を指す言葉としても使われます。このため、良好なコーポレートガバナンスが確保されているという表現は、企業がそのステークホルダ(利害関係者)に対して、公正で透明な経営を実施していることを意味します。

コーポレートガバナンスは、企業の持続可能な成長と社会的信頼を築くための重要な要素であり、企業の経営者だけでなく、全てのステークホルダにとって大切な考え方といえるでしょう。

関連項目:ITガバナンス

公益通報者保護法

公益通報者保護法は、企業や組織における不正行為や違法行為を内部告発した者(公益通報者)が、その後、報復や差別的な扱いを受けることがないよう、その立場を保護することを目的とした法律です。

この法律は、公益通報者が社会全体の利益のために行動することを奨励し、同時に彼らがその行動によって解雇などの不利益を被ることから守ることを目指しています。

公益通報の条件

  • 通報者が通報の対象となる事業者へ労務提供している労働者(正社員・派遣労働者・パートタイマー・アルバイトなど)であることのほか、必要と認められるその他の者
  • 通報に不正の目的がないこと
  • 法令違反行為が生じた、又はまさに生じようとしていること
  • 通報内容が真実であると証明できること

通報先

  1. 事業者内部
  2. 行政機関(監督官庁や警察・検察等の取締り当局)
  3. 報道機関など

禁止される行為

  • 公益通報をしたことを理由とする解雇
  • 公益通報をしたことを理由とする労働者派遣契約の解除
  • 公益通報をした労働者などに対する不利益な取扱い
  • 公益通報をした役員の解任
  • 公益通報者に対する損害賠償請求

行政機関への情報開示請求

情報公開法

情報公開法(正式名称:行政機関の保有する情報の公開に関する法律)は、行政機関(府・省・庁・委員会など全ての行政機関)の保有する全ての行政文書を対象として、誰でもその開示を請求することができる権利を定めています。

この開示請求権を手段として、政府が国民に対して持つアカウンタビリティ(説明責務)を全うすることと、行政の在り方を最終的に決定するのは国民であることを明確にして、民主的な行政の推進に役立てることを目的にしています。

なお、行政機関に請求する場合の手数料は1件につき300円の費用がかかります。

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